「真面目にやんなよ、みやこ」
補習が終わるまであと10分。
隣の席で数式を解いていた友人の紗莉が声をかけてくる。
「めんどくさい」
「これ解き終わらなかったら午後も追加で補習って知ってて言ってんの?」
「え、うそ。どうりで紗莉ちゃん頑張ってるわけだ」
「残り10分あるんだからあんたもちゃっちゃとやりなー」
「うう、」
私と同じく補習を受けてるのに紗莉は意欲がある。ていうか私が話聞いてなさすぎたみたいだけど。
もう遅いかもしれないなあ、と思いつつ配られたプリントに存在を示してるややこしい問題たちにシャーペンで挑んでみる。開始30秒。1問解いて忙しない。
ぼーっとしてた無駄な時間が愛しいよ。そう思っちゃうくらいには10分では過酷な量だし、証明なんてわからない。自業自得が積み重なっちゃう感じ。気持ちだけが焦っていた。
一通り、単純な計算問題だけはスラスラと書き込んでいき、関連されてる文章題はこなしていく。だけどね、だけど。ひとって得意不得意あるし仕方ないけど書けないな、証明だけが。順序をすっ飛ばしてしまう、し、途中経過が追いつけないし。って全部言い訳だけど。
「はい、終了。回収するから書くのをやめなさい」
詰んだ私をちらりと見て、目を合わせてきた紗莉は「バカじゃん」と口にした。