「見た目通りお堅いなあ、ちょっとしたジョーダンなのに。それとも私の揶揄い方が悪かったのかなあ」



近づいたそのままで不自然に止まった俺に、天辻みやこはたのしそうな笑い声を零して首を傾げる。


それが、なんか。


なんだ。


認めたくない四文字がパッと脳裏に浮かんだ。



「なーんて、顔してるの?」

「え、あ、……いや。天辻ってなんか思ってたの違う」

「思ってたの、と違う?」



咄嗟に口に出た言葉を拾い上げた表情が、きょとんと不思議そうに移り変わる。



「それ気になる。詳しく言ってみてよ」



ねえ。と続けた天辻に、ちょっと考えるフリをするように目線を逸らした。


思っていたのと違う。って言われて気になるようなものなのかと自問する。ああでも自分だったら気になってしまうかもしれないと自答する。


つい、口についた言葉の所為でこんなに考え込むなんて、そうそうないことだ。自分は特にそういう失敗をしない部類の人間だと過信していたから。


目線を逸らすついでに雨を気にする素振りをして、それでも逃避し難い思考回路に内心溜め息をついた。


墓穴を掘る、というのは。



「あんま人のこと好きじゃなさそうっていうか、線引いていそうだなって、人間関係とか」



こういうことかと身にしみる。



「なるほどね、確かに私あんまり関係築くの得意じゃないかも」



そんなに前面に出てたならショックだ、と付け加えた天辻に思わず目線を向ければ、彼女はすこし困ったように眉を下げた。