「まじ? じゃあ私が今日補講で怒られたとこも見てたの?」
「それは……、見てないよ流石に。おれ補講受けてないもん、頭良いから」
「あ、あー今バカにしたよね。完全に見下してるよね、赤点の何が悪いんだ!」
「赤点って悪いことづくめじゃん。おまえが補講行ってるからやることやれないし暇なんだよ」
「補講無くても私はあんたとやることやりません」
ふれあう、ってどんなに心地よくても。それより先には踏み込めないっていう境界線だけ撫でていて、中身は意思でしか確認取れないことだらけ。意図せずこぼれたのが本音だってこの人は言うし、意図せず使った言葉は毒だ。
羨ましくて焦がれてる。でもその正体は彼のなかに存在するからいつもきれいで、脆弱で黒い。
あの日も今日も夕立のせいにしてつなぎとめようってことだけは放っておいて。足りないから容量は過多くらいに引き上げて、うるさい心音を無視して彼にキスをした。
「だからあんまそういうの、簡単にしないでほしいんだけど」
「成澤って私に奥手と大胆を求めがちだよね」
「気分次第でコロコロ変わるおまえがやべーの。こっちは清純なんだよ、やさしくして」
「えー」
私の溜め息にうれしそうにわらった彼の首にだきつく。言われた通りやさしく、なんて教科書を丸暗記なこと出来ない。出来てたら赤い印はつかない。そんなこと教えたい。
見つめた眼は変わらなかった、何が何でも。私の為じゃなくても。きっとこのままいてくれるおかげで今日も明日もその次もって心情平和だけもたらして。居座り続ける。
知らずにいたい絶望も、出会いたい幸福も、この人の中心の奥にいるから。
今が更新される度にずっと。
「しかたないなあ」
急転直下し続けるんだと思う。