優先順位の1位の席に偉そうに座っているこの人が、この上なく私と不釣り合いな人間だってことを芯から理解してる。だからいたいの。一緒に居て、心のどこか痛い思いしても。


名のつく関係が築けなくてもよかった。忘れたくなかった。知らずにいたかった。気づけなかったところまで見透かされてしまうのが怖い。


何度か啄みを繰り返すと、そろそろ耐えるのも厳しくて目を逸らす。誰よりも優先したい根底で怖い、なんて覚えた自分が気味悪かった。



「天辻、こっち向けよ」

「嫌」

「天辻」



私は。



「何だっていいから私の為とか思わないで」



この人が私の為だと言って損なうのは嫌だ。



「どういうこと?」

「だから、成澤がキッチンの、」

「あー……、“ ケトル沸かしてて消すの忘れたまま家出てきたこと今思い出した、キッチンやばいかも ” ってやつ? あれ嘘だよ」

「そんなの全然気づいてるよ」

「え、」

「あんた嘘つくのド下手なんだから」



嘘なんて別にいいのに、やっぱり優位はモヤるし、成澤のまっすぐさが私は結構気に入ってる。だから嫌だったのかも、気にしていない素振りがぜんぶ。



「じゃあ話早いね。別に家連れてきたのも嘘ついたのもわざわざ面倒見てやろうって配慮も、おまえの為じゃねーよ」