成澤に電話を掛けた時点でこうなってほしいって願望働いて。ピンクのハートをだきしめるうさぎのスタンプを返した。察しが良い紗莉には目一杯のフラペチーノでも奢らせて貰おうっていう心意気。


まぁ今日はいつ帰るとか何も言ってないけれど。とか、おとなぶってる。優先してる。成澤を中心になんて私の世界は動いていない。だけどこういう衝動的な承認欲求の前だと彼を優先の第1位に座らせてしまう。


それが私のいちばんウザい部分で、紗莉はそういうのキモいって言いつつ尊重しようなんて私よりおとなな位置づけでわらっている。


だから、それだけ。
それだけのことで、あの雨の些細な切っ掛けで、私はかなり傾倒してブルーな穴に真っ逆さま。


それが今日に至る一種の承認欲求みたいに私を突き動かしていた。



「なるさわー、早くしてよ。風邪引いちゃう」



うざったい思考回路ぶつ切りにしたくて呼び慣れた名前を大声に乗せる。濡れた程度で弱っちゃう精神状態じゃないし健康良好の私だけど、今が先走ってしまって追いつけなくなる前に。


前に、出会ってみたいな。くだらないこと敷き詰めた感情の小部屋でも教えてあげるから、今の言葉にしがみつきたい。あなたの、脆弱の欠片と。



「天辻が風邪引くわけないだろ」

「なんであんたが断言するんだよ。ま、そうだけどね」



ちらりと玄関のほうに顔を出した成澤がすこし困ったように微笑んで、ちょっと待ってとまた消えた。


仕方ないから待ってる数分、母から立て続けに送られてきていたメッセージを返していると、大きな白いタオルを雑に抱えた彼が私を呼んだ。


風呂入れ、って雑な文言とともに。



「風邪引くとか言ったから?」

「そーかもね」