成澤がまじめないい子なんて笑わせないでほしい。でも確かに外見はまじめないい子。黒髪だしおとなしいし。ピアスありえないほど開けてても笑顔が優等生だし。


人当たりはそこそこだし。良いか悪いかなんて断言できないけれど成澤は人付き合いを上手なタイプで、私とは違う。


だから用事もなければ教室で話したりしないし、学校の人にこんなとこ見られたら普通に驚かれる、はず。成澤、見た目はすごく良い。外面は完璧。中身はお子さまだけど。


なんて。


でも結構たのしいから一緒にいてもってくらいの気持ちで私は。



「家ついたらとりあえず玄関から動かないでよ。床濡れそうだから」

「失礼だな〜、その辺は弁えてるから安心して」

「あ、そ」

「それよりキッチン無事だといいね。盛大にわらってあげるね」

「ほんと最悪なんだけど。兄貴帰ってこない日でよかった」



他愛ない会話を投げあっていると成澤が住まいとする部屋のドアが見えた。あの雨宿りしてた場所からだいぶ急いでここまで来たっていうのに、ついてからはゆっくり歩く彼は最悪だとか言いながら私の目を一度も見ない。


別に何でもいいけど、なんか、うーん、嘘つく時は慎重になったほうがいいって私は思う。正直なところって成澤の美徳だから責めようとか思わないけど。


どんな真意なのかと考えを練っているとたのしくて、どうやって突き止めようかなんて至れば優位を取得してワクワクする。



「お兄さん帰ってこないならなんでもできるね、成澤くん」