◇



「うん……うん、だから大丈夫。ありがとね、紗莉」

『わかったわかった、気をつけなね』

「オッケー。じゃあね」



さっきの電話の件は落ち着いた、と話すと適当にあしらう紗莉の言葉が返ってきて。ふう、と胸を撫で下ろす。


雨はまだやっぱりひどい。え、こんなもん？なんて思ってしまうけど長引いたら長引いただけ得する場合や事や物があるんだってそれぞれみんな理解してる。


すこし弱まったかな、と思い始めたちょうどその時、この雨の中急ぐだれかが遠くで見えた。風が出てきてるせいで意味を為さない傘、ちょっと淡い水色の。華奢な柄の。


思わず笑いそうになって手を振った。



「やっほーっ」



傘を差したその人の表情がだんだんはっきりを見えるようになる。あ、無表情。かわいくないな。


私が雨宿りしている場所まで到着すると、その人はこの天気に似合うような暗い冷の微笑みで、私の目を真っ直ぐ睨みつけた。



「やっほーじゃないんだけど」



雑に傘を閉じたその手に雨が数滴したたって。



「何、その呆けた顔」



食いるように眺めてた私に眉根を寄せた顔が向く。



「う、んん、ふふ。なんか良いね、懐かしい」

「意味わかんないね」

「そんなのわかんないからいーじゃん」



わかんないから良い、とか未知。だよね、と思って告げた言葉も繕ったようで気味悪い。