「あー。そういえばさ」
 先輩が何かを思い出したかのように大声を上げた。あまりのボリュームに通行人が振り返っている。
「先輩、声が大きいです」
 瀬戸さんに突っ込まれてしまった。
「おっと、いけないいけない。明石君ってさどこの大学狙ってるの?確か夢のために特待生狙ってるって言ってたよね?」
 そういえば結局詳細を誰にも話していなかったな
「天文学の学校です」
「天文学!?」
「もしかしてそのきっかけって前原集落だったりする?」
「そうだよ」
 あの夜景がきっかけじゃないけど、前原集落はどこも星がきれいに見える。おじいちゃんに星座を教えてもらったことがあった。確かそのときはだと思う。天文学を目指したのは
「やっぱり前原集落すごいな」
「ダムは作っちゃだめでしたよ」
「ま、今更ですけどね」
 話していると電車の時間が近づいてきた。スマホが震えたから見てみると発車時間が近づいてると星奈がメッセージを送ってきた。
「すみません、そろそろ時間なので」
「あ、ごめんね。でも最後に一つだけ」
「はい」
「みんな、これ持ってて」
 先輩は小さな紙袋からミサンガを取り出した。
「もしよかったらさ、約束しよう。もしみんなの進学先が東京になったら、また集まって鉄道模型を作ろう」
 先輩はまた泣きそうな顔になってそう言った。
「いいですねそれ」
「もし次があるなら、散々言ってくれた審査員を見返してやりましょう」
「じゃあ約束……で、いいかな?」
 そこで不安そうにしないでください。いや、俺たちの方が曖昧な答えだったな
「はい」
「はい」
 俺たちの答えは当然OKだった。
「じゃあ明石君は赤で、瀬戸ちゃんは黒、私は青」
 それぞれイメージにあった色になっているみたいだ。
「じゃあまた会いましょう」
「うん。それまでさようなら」
「さようなら明石君。元気でね」
「さようなら」
 走りながら後ろを向いて姿が見えなくなるまで手を振り続けた。