来た時は一人だったけど、今日は家族が一緒にいてくれた。星奈も少しとはいえお世話になった町に挨拶がしたかったそうだ。ちなみに退院の時は両親の仕事が忙しい合間(と言ってもちゃんと休みはとった)だったから挨拶なんてしてる暇がなかったらしい。
 それと、あの模型は三人で話し合い学校に譲ることにした。学校に展示するらしく、囲いは外されてしまうみたい。まあ、当たり前だ。でないと見られないし。
 そして駅で電車を待っていると聞き慣れた声が2つ届いた
「明石君」
「明石君」
 先輩と瀬戸さんだ。父さんと母さん、星奈は気を利かせてくれて外してくれた。
「二人とも来てくれたんですね」
「当然だよ。仲間が旅立っていっちゃうんだから」
「私は共に頑張った仲間を見送らないなんて薄情じゃないからね」
 軽口を叩きながら笑い合う。これも最後なのか
「実家は静岡だっけ?」
「そうだよ」
「じゃあ遊びに行く。静岡なら富士山、お茶、それから浜名湖」
「残念ながら浜名湖は遠いんだよ」
「あらそれは本当に残念」
 と、2人は笑い、俺もそれに釣られて笑った。
「これでお別れかぁ〜寂しいな」
 先輩の雰囲気が一変して初めて会ったときみたいな泣きそうな顔をした。それに慌ててフォローをする。
「今生の別れじゃないんですから。いつでも遊びにきてください。静岡案内しますよ」
「うん。あ、そうだ。私ね東京の大学行くことにした」
「東京ですか」
「うん。実はやりたいことまだ見つからないからさ、東京の大学入ってみつけようと思って」
「いいじゃないですか。先輩の明るさならどんな仕事でも似合うと思います」
「えへへ、そう」
「あ、いたずらグッズはやめてください」
「もう作らないよ〜。明石君のいじわる」
 と頬を膨らませて両手を上げて抗議した。
「明石君、ちょっといいかしら?」
「いいけど?」
 俺と向き合い、真面目な顔をする。
「明石君。あなたと一緒に活動できて本当に楽しかった。助けてくれたことも感謝してる。この三ヶ月人生の宝物になる。それくらい価値のあるものだった。本当にありがとう」
 最後にぴしっと決まったお辞儀をした。
「俺もだよ。瀬戸さんがいなかったら案が出ずに暗礁に乗り上げてそのまま沈没してたかもしれない。瀬戸さんの物怖じせずに真っ直ぐな姿勢が好きだったぜ。ありがとう」
 俺も瀬戸と同じようにお辞儀をした。ちゃんとできてるかはわからんけど、精一杯やった。
「私も私も〜」
 今度は先輩が俺と向かい合った。
「明石君、最初は私の印象最悪だったと思うけど、許してくれてさらにそんな私と一緒に部活やって。明石君と過ごした時間は一生忘れない。忘れられない。だからまた会いに行くね。……ありがとう」
「こちらこそ。先輩の明るさには本当に助けられました。確かに最初は印象は悪かったです。でも本気で謝る姿には誠実さを感じましたし、その後は率先して懇親会とか開いて三人をまとめてくれました。もちろん先輩の器用さもすごく助かりました。先輩だっていなくてはならない存在です。本当にありがとうございました」
 先輩にもお辞儀をした。