そして12時近くになったから遅れて来た金谷先生にレイアウトの管理を任せて俺たちはステージに向かう。
 前の組は前回総合最優秀賞を取った学校で、プレゼンも惹かれるものがあった。その後にやらなければならないプレッシャーがすごい。けど、いろいろありすぎてこの緊張が心地よくなっていた。危ないかもしれない
『続きまして弥奈咲学園の発表です』
「行くぞ」
「「うん」」
 俺を挟む形で二人が立った。そして練習通りを心がけて勝負の第一声を放つ
「会場の皆さんこんにちは」
 ちょこっとこんにちはと帰って来た。
「僕達は弥奈咲学園鉄道模型部です」
 最初は学校の説明を行う。それが通例らしい。このプレゼンも直前の完成になってしまったから、学校の写真とかもあまりいいのを使えてないのが悔しい。
「僕達は今年鉄道模型部を立ち上げまして。一から作ったので苦労が絶えませんでした」
 本当のことを言ったら問題になるのでそこは誤魔化した。
「このレイアウトのコンセプトは”思い出”です。理由は僕と隣にいる先輩はモデルとなった前原集落に住んでいたことがありました。しかしその集落はダムができて沈んでしまい、もう二度と目にすることができません。そこでその思い出の詰まった町をよみがえらせようという思いからこのレイアウトを作りました。このレイアウトは少し特殊で僕の思い出である前原集落の夜景の中でも一番きれいだと思ったものを再現するため家庭用プラネタリウムの映写機を山の中に埋め込み、敢えて周りも囲って上に天の川を作りました」
 この説明に会場からはどよめきが聞こえた。
「そして、僕と先輩だけでは左隣の彼女の思い出がない状態になってしまうので、聞いたところ、列車に思い出があるということで車両を彼女の思い出に合わせました。またこの列車は昔星の寝台特急と呼ばれた列車の一つで流れ星のような存在です。天の川の間を駆け抜ける流れ星というロマンチックな世界を醸し出しています」
 どよめきが大きくなるのがわかった。これはいい兆候だ。その勢いのままプレゼンを行う。
「最後に、僕達の思い出を是非見に来てください。ありがとうございました」