6時半。

健康的な起床時間だと思う。

まだ眠い目を擦りながら、ピンクのうさぎのステッカーが貼ってあるパソコンを開く。

ちなみにこのシールは俺の趣味ではない。

パソコンを起動している間にコーヒーを淹れる。

ガムシロップとミルクたっぷりで。

パソコンが起動し終えたので、メールをチェックする。

「始祖の神様…」

そのタイトルに目が止まる。

ドアのノック音が聞こえた。

…もしかして狐の迎え?だとすると早くないか。

《秋斗様ー秋斗様ー開けてくださいましー白丸と黒丸にございますー》

「うわ、まじか…」

ドアの前に立ち、こう述べる。

「近所迷惑なので大声を立てるのはやめてください。それから着替えるので、すみませんが5分ほど外で待ってください」

《承知いたしました》

すごく静かになったな。

外で待たせるのは申し訳ないが、仕方ない。

ぱっと用意を済ませて、ドアを開ける。

人力車…ならぬ、“狐”力車か。

「お待たせしました。…あれ、雪原さん?」

「秋斗くん、わたし、5時半に起こされたんだよお…」

5時半に来られるのはさすがに早いが、半泣きで言われてもどうにもできない。

「それで、白丸さん黒丸さん。なんでこんなにはやく…?」

《和装に着替えていただくためです》

ああ、なるほど。

だったら制服なんて着てくる必要なかったじゃないか。

ほら、雪原なんて制服を着たまま呆然としているぞ。

「わ、わたし、朝、起きて、制服…」

がんばったのにぃぃ、と横で泣き崩れる彼女。

さすがに可哀想だ。

《到着いたしました。お足元に気をつけて、お降りください》

「あ、はい。ありがとうございます」

「ありがとうございます…」

まだ少しぽやぽやした顔で萌柚が言った。

「椹木くん、支度がはやく終わったら寝るから起こして…」

そんな雪原に黒丸がきっぱりと言った。

「はやく終わることはございません」

その時の雪原の顔と言ったら……。