「ベルゼバブ……私、倒す。アレク……城門前で、やっつけったって……聞いた」
「それで協力してほしいと……」
騒ぎになったから、顔や名前こそ出なかったもののニュースになったしな。
貴族特権で“緘口令(かんこうれい)”らしきものは一応出してもらえたんだけど、たいした効力もなかったようだ。
人の口にはなんとやらだ。
「ほ、他にも、声……かけた」
「どなたに……?」
聞くと、レベル34という飛び抜けた存在の少年がこの学院にいるらしい。
その名は――。
「……スネちゃま」
「なんだ貴様、急に!」
サー先輩と一緒にお友達候補を見に行くと、そこには不機嫌な顔のスネちゃまが。
自室の前で偉そうに腕組みして私達を睥睨するスネちゃまは、例の立派な“御髪(おぐし)”を、見せつけるように手でスッと撫でて揺らす。
部屋のネームプレートをチラッと見ると『レスター・ブランマーシュ』とあった。
でも、心の中ではぜひ『スネちゃま』と呼ばせていただこう。
「と、友達……できた」
「わざわざそれを自慢しに来たのか、サーハイン!」
この子、大公家令嬢になんて態度を。
隣に立つ私を指さして不気味に「ぐふふっ……」と肩で笑うサー先輩に、臆することなく物言うスネちゃま。
けどサー先輩はまったく気にせず、今度はスネちゃまを指さす。
「と、友達……?」
「ちがう! いいか、よく聞け! 僕は貴族が大の嫌いなんだ! 友達? ありえないねっ! おまえら特権階級をこの手で引きずり下ろし、地べたに這いつくばらせてから、僕はもっとマシな友達を手に入れるよ!」
バタン!
と、扉を閉められた。
「……リトライ」
ぴんぽーん。
この人もなかなか臆さないな。
何事もなかったかのように再度インターホンを押すサー先輩。
少しして、スネちゃま再登場。
「しつこいな!」
「じゃあ、討伐……一緒」
「討伐……?」
意味が解らないと眉をひそめたスネちゃまが、私を見る。
いかん、翻訳が必要だ。
「……あの、サーハイン様はベルゼバブの討伐を計画しているのです」
「君も同行するのか、リスティーナ・アレクサンド」
「はい、友人として付いていくだけですが」
サー先輩は私の腕をギュッとつかんで「友達……ぐふふっ……」と笑う。
「ふん、いいだろう。僕の実力を示すいい機会だ」
そう言ってスネちゃまは澄まし顔で髪をファサッと。
「と、友達……」
「友達じゃない、同行するのはあくまで力の誇示のためだ! リスティーナ・アレクサンド! おまえは許さないからな!」
「なんで……?」
なんか知らないけど憎まれてる?
私は指さして敵意を向けるスネちゃまに困惑した。
他の連中と違っていやらしい陰湿な感じがしないのは救いか。
と、そこに。
「あ~、変な髪型くんじゃ~ん! ハロハロー♪ 元気ィ~?」
「ざこヘア~♪」
「あら~、真っ赤になっちゃうんだぁ~♪」
「くっ……!」
おい、貴族を打倒するんじゃなかったのか?
公爵家の三姉妹であるギャル先輩達に発見され、メスガキムーブでからかわれるスネちゃま。
リビングで閲覧できるデータで確認したけど、この三姉妹は学院でも指折りのメスガキどもだ。
長女セシリーは長身金髪のストレートヘア。髪留めで左のおでこを見せている。
耳にたくさんピアスを付けていて、たまにちらりと見えるおへそや、ときどき見える舌先にも宝石が煌めている。
ギャル風のメイクしているが大人びた美しさがあり、上着を腰に巻いて、ゆるく結んだタイをしている。
胸がかなり大きいのでタイの形が膨らんで見え、チェック柄の短いスカートからはスラリと長い太腿をのぞかせ、ダブダブのルーズソックスを穿いている。
次女フルネは黒髪のおかっぱ頭で、フードをかぶっているが猫耳の形に膨らんでいる。
髑髏の意匠をしたシルバー系のアクセをたくさん身に付けていて、ややロックな雰囲気をかもし出す。
言動こそメスガキだが、猫のように冷たい目で冷笑を浮かべ、棒つきのキャンディをいつもくわえている。
前を開いたパーカーを羽織り、お行儀悪くポッケに手を突っ込み、素足にシューズのその歩みは猫のごとくぴょんぴょんと軽快である。
三女のカニーニャは野性味を帯びた褐色肌で、ツインテールの女の子。
あどけない表情の小悪魔系で、獲物を狙う大きな赤い眼は見る者を魅了し射すくめる。
可愛い物が好きなのか、ブサカワ動物のキーホルダーや缶バッヂをショルダーバックにたくさん付けている。
スレンダーなので姉とくらべると起伏にとぼしいが、元気だけはとにかくいっぱい。三姉妹の切り込み隊長的存在だ。
昼間は往来可だけど、ここ男子寮だよね?
キミら、わざわざ何しに来たん?
「お、覚えてろよ、リスティーナ・アレクサンド!」
やり場のない怒りをとりあえず私にぶつけるな。
ギャル先輩達が去ったあと、スネちゃまはジト目で見る私を悔しまぎれに怒鳴りつける。
スネちゃまこと、レスター・ブランマーシュが仲間になった!
「それで協力してほしいと……」
騒ぎになったから、顔や名前こそ出なかったもののニュースになったしな。
貴族特権で“緘口令(かんこうれい)”らしきものは一応出してもらえたんだけど、たいした効力もなかったようだ。
人の口にはなんとやらだ。
「ほ、他にも、声……かけた」
「どなたに……?」
聞くと、レベル34という飛び抜けた存在の少年がこの学院にいるらしい。
その名は――。
「……スネちゃま」
「なんだ貴様、急に!」
サー先輩と一緒にお友達候補を見に行くと、そこには不機嫌な顔のスネちゃまが。
自室の前で偉そうに腕組みして私達を睥睨するスネちゃまは、例の立派な“御髪(おぐし)”を、見せつけるように手でスッと撫でて揺らす。
部屋のネームプレートをチラッと見ると『レスター・ブランマーシュ』とあった。
でも、心の中ではぜひ『スネちゃま』と呼ばせていただこう。
「と、友達……できた」
「わざわざそれを自慢しに来たのか、サーハイン!」
この子、大公家令嬢になんて態度を。
隣に立つ私を指さして不気味に「ぐふふっ……」と肩で笑うサー先輩に、臆することなく物言うスネちゃま。
けどサー先輩はまったく気にせず、今度はスネちゃまを指さす。
「と、友達……?」
「ちがう! いいか、よく聞け! 僕は貴族が大の嫌いなんだ! 友達? ありえないねっ! おまえら特権階級をこの手で引きずり下ろし、地べたに這いつくばらせてから、僕はもっとマシな友達を手に入れるよ!」
バタン!
と、扉を閉められた。
「……リトライ」
ぴんぽーん。
この人もなかなか臆さないな。
何事もなかったかのように再度インターホンを押すサー先輩。
少しして、スネちゃま再登場。
「しつこいな!」
「じゃあ、討伐……一緒」
「討伐……?」
意味が解らないと眉をひそめたスネちゃまが、私を見る。
いかん、翻訳が必要だ。
「……あの、サーハイン様はベルゼバブの討伐を計画しているのです」
「君も同行するのか、リスティーナ・アレクサンド」
「はい、友人として付いていくだけですが」
サー先輩は私の腕をギュッとつかんで「友達……ぐふふっ……」と笑う。
「ふん、いいだろう。僕の実力を示すいい機会だ」
そう言ってスネちゃまは澄まし顔で髪をファサッと。
「と、友達……」
「友達じゃない、同行するのはあくまで力の誇示のためだ! リスティーナ・アレクサンド! おまえは許さないからな!」
「なんで……?」
なんか知らないけど憎まれてる?
私は指さして敵意を向けるスネちゃまに困惑した。
他の連中と違っていやらしい陰湿な感じがしないのは救いか。
と、そこに。
「あ~、変な髪型くんじゃ~ん! ハロハロー♪ 元気ィ~?」
「ざこヘア~♪」
「あら~、真っ赤になっちゃうんだぁ~♪」
「くっ……!」
おい、貴族を打倒するんじゃなかったのか?
公爵家の三姉妹であるギャル先輩達に発見され、メスガキムーブでからかわれるスネちゃま。
リビングで閲覧できるデータで確認したけど、この三姉妹は学院でも指折りのメスガキどもだ。
長女セシリーは長身金髪のストレートヘア。髪留めで左のおでこを見せている。
耳にたくさんピアスを付けていて、たまにちらりと見えるおへそや、ときどき見える舌先にも宝石が煌めている。
ギャル風のメイクしているが大人びた美しさがあり、上着を腰に巻いて、ゆるく結んだタイをしている。
胸がかなり大きいのでタイの形が膨らんで見え、チェック柄の短いスカートからはスラリと長い太腿をのぞかせ、ダブダブのルーズソックスを穿いている。
次女フルネは黒髪のおかっぱ頭で、フードをかぶっているが猫耳の形に膨らんでいる。
髑髏の意匠をしたシルバー系のアクセをたくさん身に付けていて、ややロックな雰囲気をかもし出す。
言動こそメスガキだが、猫のように冷たい目で冷笑を浮かべ、棒つきのキャンディをいつもくわえている。
前を開いたパーカーを羽織り、お行儀悪くポッケに手を突っ込み、素足にシューズのその歩みは猫のごとくぴょんぴょんと軽快である。
三女のカニーニャは野性味を帯びた褐色肌で、ツインテールの女の子。
あどけない表情の小悪魔系で、獲物を狙う大きな赤い眼は見る者を魅了し射すくめる。
可愛い物が好きなのか、ブサカワ動物のキーホルダーや缶バッヂをショルダーバックにたくさん付けている。
スレンダーなので姉とくらべると起伏にとぼしいが、元気だけはとにかくいっぱい。三姉妹の切り込み隊長的存在だ。
昼間は往来可だけど、ここ男子寮だよね?
キミら、わざわざ何しに来たん?
「お、覚えてろよ、リスティーナ・アレクサンド!」
やり場のない怒りをとりあえず私にぶつけるな。
ギャル先輩達が去ったあと、スネちゃまはジト目で見る私を悔しまぎれに怒鳴りつける。
スネちゃまこと、レスター・ブランマーシュが仲間になった!