鈴白めぐみ32歳。
よく友達に男みたいだと言われるが女だ。
残業を終えて会社からの帰宅途中、交差点でトラックが突っ込んで来た。
事故動画とか好きでよく見ている俺は、怪しい挙動をするトラックを警戒してたのでなんとか避けられた。
突っ込んで来たトラックは電柱に衝突し、クラクションの音を鳴り響かせながら止まった。
「マジかよ……?」
もう深夜だったけど辺りは騒然となった。
ほろ酔いの運ちゃんは運転席でのんきに寝てやがるし、面倒なので俺はさっさと退散した。
明日も会社があるんだ。
付近には防犯カメラもいくつかあるし、俺がいなくても警察が適当に処理するだろう。
面倒ごとからは逃げるのが正解だ。
「ツナマヨ、最後の一個ゲット♪」
コンビニでメシ買って、家に帰ろうと交差点に差しかかったら、トラックが突っ込んで来た。
いやもう、ふざけんなよと。
しかも、今度は運転手不在で突進して来やがる。
衝突寸前に横っ飛びで一回転して受け身を取ると、トラックは交差点のど真ん中で急停車した。
キンコンキンコンという音を鳴らしていたトラック。
その数秒後、今度は猛スピードでバックして来た。
「おいおいおいおいっ!?」
完全に体勢を崩していた俺は日ごろの不摂生がたたってすぐには立てない。
しかもハイヒール。
トラックの荷台が猛スピードで迫る。
「うああああっ!?」
こうして俺は、無事にトラックに轢かれたのだった。
「まことに申し訳ありません……」
「ここは……?」
気がつくと天国……のような光あふれる場所に立っていた。
目の前には白い長衣をまとう線の細い美青年がいて、申し訳なさそうに頭を下げている。
悩まし気に閉ざされた双眸に、肩までかかるストレートの長い金髪、頭に天使の輪っかが見えるけど、まさか天使だとでも言うつもりか?
「事故で死んでしまった貴女を誤ってこちらの世界に召喚してしまいました」
「いやいや、殺る気まんまんのトラック差し向けたよね? 事故じゃないよね?」
あれは殺意しか感じなかった。
「あなたの魂はすでにこちらの世界に囚われてしまい、地球には転生することはできません」
そう言って、目元にそでを当ててさめざめ泣く美天使。
「おい、聞けよ!?」
「お詫びとしてアナタにはいくつかのチート能力を授け、転生先の世界『ファスナスト』で快適な生活を送れるようサポートさせていただきます」
「ねえ、聞いて?」
「それでは、こちらのスロットを五回まわしてください。出た絵柄によって素敵なスキルが譲渡されます」
だめだこいつ。話を聞きやしねえ。うちの上司と一緒だ。
一発ぶん殴ってやろうかとも思ったが、仕方ないのでスロットを回す。
ドラムがしばらく回転したのち、宝箱の絵柄が横一列キレイにそろった。
「おお、これは凄い! アイテムボックスですよ! これは物をいくらでも保存できる便利なスキルです!」
「そうなの……?」
あんまりそういうのよくわからないんだけど。
俺は気を取り直してスロットを回す。
「取得経験値1万倍! 不老! 鑑定! 全自動回復! どれも素晴らしい!」
「どう素晴らしいのかよくわからないんだけど……俺はこれからどうなるわけ?」
「ファスナストのとある国の男爵家の長女として、幸せに暮らしていただきます」
「男爵って、貴族だよな? なんで地球の貴族階級が異世界で適用されてるんだ?」
「それでは、よき転生ライフを! 落ちろッ!!」
「ちょ――まっ!?」
美天使がどこからかのびて来た荒縄を引っぱった。
足元の雲にぽっかり穴が空き、猛スピードで落下した。
よく友達に男みたいだと言われるが女だ。
残業を終えて会社からの帰宅途中、交差点でトラックが突っ込んで来た。
事故動画とか好きでよく見ている俺は、怪しい挙動をするトラックを警戒してたのでなんとか避けられた。
突っ込んで来たトラックは電柱に衝突し、クラクションの音を鳴り響かせながら止まった。
「マジかよ……?」
もう深夜だったけど辺りは騒然となった。
ほろ酔いの運ちゃんは運転席でのんきに寝てやがるし、面倒なので俺はさっさと退散した。
明日も会社があるんだ。
付近には防犯カメラもいくつかあるし、俺がいなくても警察が適当に処理するだろう。
面倒ごとからは逃げるのが正解だ。
「ツナマヨ、最後の一個ゲット♪」
コンビニでメシ買って、家に帰ろうと交差点に差しかかったら、トラックが突っ込んで来た。
いやもう、ふざけんなよと。
しかも、今度は運転手不在で突進して来やがる。
衝突寸前に横っ飛びで一回転して受け身を取ると、トラックは交差点のど真ん中で急停車した。
キンコンキンコンという音を鳴らしていたトラック。
その数秒後、今度は猛スピードでバックして来た。
「おいおいおいおいっ!?」
完全に体勢を崩していた俺は日ごろの不摂生がたたってすぐには立てない。
しかもハイヒール。
トラックの荷台が猛スピードで迫る。
「うああああっ!?」
こうして俺は、無事にトラックに轢かれたのだった。
「まことに申し訳ありません……」
「ここは……?」
気がつくと天国……のような光あふれる場所に立っていた。
目の前には白い長衣をまとう線の細い美青年がいて、申し訳なさそうに頭を下げている。
悩まし気に閉ざされた双眸に、肩までかかるストレートの長い金髪、頭に天使の輪っかが見えるけど、まさか天使だとでも言うつもりか?
「事故で死んでしまった貴女を誤ってこちらの世界に召喚してしまいました」
「いやいや、殺る気まんまんのトラック差し向けたよね? 事故じゃないよね?」
あれは殺意しか感じなかった。
「あなたの魂はすでにこちらの世界に囚われてしまい、地球には転生することはできません」
そう言って、目元にそでを当ててさめざめ泣く美天使。
「おい、聞けよ!?」
「お詫びとしてアナタにはいくつかのチート能力を授け、転生先の世界『ファスナスト』で快適な生活を送れるようサポートさせていただきます」
「ねえ、聞いて?」
「それでは、こちらのスロットを五回まわしてください。出た絵柄によって素敵なスキルが譲渡されます」
だめだこいつ。話を聞きやしねえ。うちの上司と一緒だ。
一発ぶん殴ってやろうかとも思ったが、仕方ないのでスロットを回す。
ドラムがしばらく回転したのち、宝箱の絵柄が横一列キレイにそろった。
「おお、これは凄い! アイテムボックスですよ! これは物をいくらでも保存できる便利なスキルです!」
「そうなの……?」
あんまりそういうのよくわからないんだけど。
俺は気を取り直してスロットを回す。
「取得経験値1万倍! 不老! 鑑定! 全自動回復! どれも素晴らしい!」
「どう素晴らしいのかよくわからないんだけど……俺はこれからどうなるわけ?」
「ファスナストのとある国の男爵家の長女として、幸せに暮らしていただきます」
「男爵って、貴族だよな? なんで地球の貴族階級が異世界で適用されてるんだ?」
「それでは、よき転生ライフを! 落ちろッ!!」
「ちょ――まっ!?」
美天使がどこからかのびて来た荒縄を引っぱった。
足元の雲にぽっかり穴が空き、猛スピードで落下した。