💭 🔁 ❤×?323
「うわぁぁああぁあぁぁああああッ!!」
無我夢中で走った。
みっとも無く大声を上げながら、走る。
息が切れるまで走って、息が続かなくなり、立ち止って、震える手で眼帯を付け、振り向く。
悪霊は、追って来てはいないようだ。
それにしても、何なんだアレは!?
あんなにも禍々しいオーラを放つ存在を、僕は今まで見た事が無い。
あれなら、眼帯をしていても姿が見えるかもしれない。実際、馬肉さんの時には眼帯越しに薄っすらと靄が見えていたし。
「――あっ!?」
そうしてようやく、僕は気付いた。星狩さんをほったらかしにして逃げて来てしまった事に!
まずいまずいまずい!!
星狩さんは大丈夫だろうか!? 大丈夫だとして、女の子を見捨てる最低野郎だと、星狩さんに見限られやしないだろうか。
僕は恐怖を押して交差点に駆け戻る。
果たして――――……
「星狩さん!」
彼女は、交差点の片隅で所在無さげに立っていた。
悪霊の姿は見えない。
「大丈夫!?」
星狩さんが首を傾げて、
『どうしたの? 急に走り出して』
スマホを見せてくれる。
そうか。星狩さんには、そもそもさっきの悪霊が見えていないんだった。
「あ、いや……何でも無いんよ」
馬鹿正直に『僕は貴女を見捨てたクズ野郎です』と言うのもはばかられたので、僕は言葉を濁す。
『それより、次は何処行く?』
「そ、そうだね――――……」
💭 🔁 ❤×?324
その後もデートを堪能し、旅館に戻る事、18時半。
旅館のエントランスは騒然としていた。2年4組の連中がエントランスに陣取って、スマホを覗き込みながらガヤガヤとやっている。
どうも、『いいね❤ × 56分 = 余命』が『55分』に変わっていたらしい。
慌ててスマホを確かめてみれば、言われている通り『favo_min』アカウントの名前とヘッダ画像が『いいね❤ × 55分 = 余命』に変わっていた。
【クラス委員長】長々「何時に変わったのか、分かる人はいるかな!?」
【陽キャリーダー】蹴鞠「どうだろう……お昼前、新幹線の中で確認した時には、まだ『56分』だったけど」
【セミプロダンサー】舞姫「私が気付いたのは18時過ぎよ。ここに戻って来た時に確認したら、『55分』になってた」
【映えの権化】蝿塚「何にしても、減るタイミングが早くなってる。何か、何か映える物は無い!? お土産、お土産コーナーに何か無いかなぁ!」
そうしてまた、クラスの連中がガヤガヤとやり始める。
10分ほども騒いだ後、
【コスプレイヤー】越古「あ、あのぅ……」おずおずと手を上げる。「わ、私、13時過ぎにはもう『55分』になってるのを見た、と、思う……」
【セミプロダンサー】舞姫「はぁ!? ちょっと玲亜、知ってたならさっさと言いなさいよ」
【コスプレイヤー】越古「ご、ごめんなさい! 他に知っている人が居るかな、と思って……」
越古さんは大胆なコスプレ衣装を披露するクセに、その言動は如何にも気が小さそうだ。
それにしても、はてさて。一体全体、これはどういう事だろう?
この『呪い』は、きわめて厳格なルールに則って『運営』されている――と、僕は考えている。呪い殺されているのは、いいねがゼロになっている人だけであり、いいねが残っている人はちゃんと生きている。
馬子? あれはノーカンだ。
『呪い』の『主』が居るとして、そいつはTwittooやっていない勢が即死するのを防ぐ為にボーナスの1いいねを与えるほど、このゲームに対してある種、誠実なんだ。
だからきっと、時間の減り方にも何か法則性があるはず。
スマホの電卓とメモ帳を使い、考察してみる。
僕が『呪い』の『登録』ボタンを押したのは、今週月曜日のホームルーム中、8時45分頃。
『1時間』が『59分』に変わっているのに気づいたのは翌日、火曜日の1限目の最中。
次、『58分』になっているのに気づいたのは、水曜日のホームルーム前、8時35分頃。
そして『57分』には、昨日――木曜日の朝6時半時点で既になっていた。
さらに『56分』へは、今日未明の2時40分時点で、既になっていた。
そうし今、13時時点で『55分』になっていたと判明した。
仮説として、
『1日毎に1分ずつ減る』
『1日毎というのが徐々に短くなる』
というのは確かだと思う。現に今日なんて2回分も減ったんだから。
今朝は眠気も手伝って、『法則性が無いなら考えても無駄』とふて寝してしまったけれど、自分と星狩さんの生死が懸かっているんだ。真面目に考えてみよう。
昨日の朝の考察――
2日目は8時45分から24時間後の8時45分に『59分』に、
3日目は8時45分から23時間後の7時45分に『58分』に、
4日目は7時45分から22時間後の5時45分に『57分』に、
5日目は5時45分から21時間後の2時45分に『56分』に、というのは正しくなかった。
実際には、今朝の2時40分時点で既に『56分』に変わっていたし、今日の13時には『55分』に変わってしまったという。
つまり、1分減るタイミングが加速度的に早まっている。
24時間後の火曜日8時45分に『59分』になり、その23時間後の水曜日7時45分に『58分』になる。
そこまでは、多分同じ。けど、時間の減り方が1時間ずつではなく、1時間⇒2時間⇒3時間……と増えているとしたら?
1分減るタイミングが、24時間後、(24 - 1)時間後、(23 – 2)時間後、(21 - 3)時間後、(18 - 4)時間後……というふうに短縮されつつあるとしたら?
月曜日8時45分の24時間後、火曜日8時45分に『59分』へ。
火曜日8時45分の23時間後、水曜日7時45分に『58分』へ。
火曜日7時45分の21時間後、木曜日4時45分に『57分』へ。
木曜日4時45分の18時間後、木曜日22時45分に『56分』へ。
もしも、この考えが正しいとしたら、
木曜日22時45分の14時間後とは――――……金曜日、今日の、12時45分!
越古さんが『55分』に気付いたのと、ほぼ同じタイミング!!
「あぁああああああッ!!」思わず、叫び声を上げてしまった。
「うわぁぁああぁあぁぁああああッ!!」
無我夢中で走った。
みっとも無く大声を上げながら、走る。
息が切れるまで走って、息が続かなくなり、立ち止って、震える手で眼帯を付け、振り向く。
悪霊は、追って来てはいないようだ。
それにしても、何なんだアレは!?
あんなにも禍々しいオーラを放つ存在を、僕は今まで見た事が無い。
あれなら、眼帯をしていても姿が見えるかもしれない。実際、馬肉さんの時には眼帯越しに薄っすらと靄が見えていたし。
「――あっ!?」
そうしてようやく、僕は気付いた。星狩さんをほったらかしにして逃げて来てしまった事に!
まずいまずいまずい!!
星狩さんは大丈夫だろうか!? 大丈夫だとして、女の子を見捨てる最低野郎だと、星狩さんに見限られやしないだろうか。
僕は恐怖を押して交差点に駆け戻る。
果たして――――……
「星狩さん!」
彼女は、交差点の片隅で所在無さげに立っていた。
悪霊の姿は見えない。
「大丈夫!?」
星狩さんが首を傾げて、
『どうしたの? 急に走り出して』
スマホを見せてくれる。
そうか。星狩さんには、そもそもさっきの悪霊が見えていないんだった。
「あ、いや……何でも無いんよ」
馬鹿正直に『僕は貴女を見捨てたクズ野郎です』と言うのもはばかられたので、僕は言葉を濁す。
『それより、次は何処行く?』
「そ、そうだね――――……」
💭 🔁 ❤×?324
その後もデートを堪能し、旅館に戻る事、18時半。
旅館のエントランスは騒然としていた。2年4組の連中がエントランスに陣取って、スマホを覗き込みながらガヤガヤとやっている。
どうも、『いいね❤ × 56分 = 余命』が『55分』に変わっていたらしい。
慌ててスマホを確かめてみれば、言われている通り『favo_min』アカウントの名前とヘッダ画像が『いいね❤ × 55分 = 余命』に変わっていた。
【クラス委員長】長々「何時に変わったのか、分かる人はいるかな!?」
【陽キャリーダー】蹴鞠「どうだろう……お昼前、新幹線の中で確認した時には、まだ『56分』だったけど」
【セミプロダンサー】舞姫「私が気付いたのは18時過ぎよ。ここに戻って来た時に確認したら、『55分』になってた」
【映えの権化】蝿塚「何にしても、減るタイミングが早くなってる。何か、何か映える物は無い!? お土産、お土産コーナーに何か無いかなぁ!」
そうしてまた、クラスの連中がガヤガヤとやり始める。
10分ほども騒いだ後、
【コスプレイヤー】越古「あ、あのぅ……」おずおずと手を上げる。「わ、私、13時過ぎにはもう『55分』になってるのを見た、と、思う……」
【セミプロダンサー】舞姫「はぁ!? ちょっと玲亜、知ってたならさっさと言いなさいよ」
【コスプレイヤー】越古「ご、ごめんなさい! 他に知っている人が居るかな、と思って……」
越古さんは大胆なコスプレ衣装を披露するクセに、その言動は如何にも気が小さそうだ。
それにしても、はてさて。一体全体、これはどういう事だろう?
この『呪い』は、きわめて厳格なルールに則って『運営』されている――と、僕は考えている。呪い殺されているのは、いいねがゼロになっている人だけであり、いいねが残っている人はちゃんと生きている。
馬子? あれはノーカンだ。
『呪い』の『主』が居るとして、そいつはTwittooやっていない勢が即死するのを防ぐ為にボーナスの1いいねを与えるほど、このゲームに対してある種、誠実なんだ。
だからきっと、時間の減り方にも何か法則性があるはず。
スマホの電卓とメモ帳を使い、考察してみる。
僕が『呪い』の『登録』ボタンを押したのは、今週月曜日のホームルーム中、8時45分頃。
『1時間』が『59分』に変わっているのに気づいたのは翌日、火曜日の1限目の最中。
次、『58分』になっているのに気づいたのは、水曜日のホームルーム前、8時35分頃。
そして『57分』には、昨日――木曜日の朝6時半時点で既になっていた。
さらに『56分』へは、今日未明の2時40分時点で、既になっていた。
そうし今、13時時点で『55分』になっていたと判明した。
仮説として、
『1日毎に1分ずつ減る』
『1日毎というのが徐々に短くなる』
というのは確かだと思う。現に今日なんて2回分も減ったんだから。
今朝は眠気も手伝って、『法則性が無いなら考えても無駄』とふて寝してしまったけれど、自分と星狩さんの生死が懸かっているんだ。真面目に考えてみよう。
昨日の朝の考察――
2日目は8時45分から24時間後の8時45分に『59分』に、
3日目は8時45分から23時間後の7時45分に『58分』に、
4日目は7時45分から22時間後の5時45分に『57分』に、
5日目は5時45分から21時間後の2時45分に『56分』に、というのは正しくなかった。
実際には、今朝の2時40分時点で既に『56分』に変わっていたし、今日の13時には『55分』に変わってしまったという。
つまり、1分減るタイミングが加速度的に早まっている。
24時間後の火曜日8時45分に『59分』になり、その23時間後の水曜日7時45分に『58分』になる。
そこまでは、多分同じ。けど、時間の減り方が1時間ずつではなく、1時間⇒2時間⇒3時間……と増えているとしたら?
1分減るタイミングが、24時間後、(24 - 1)時間後、(23 – 2)時間後、(21 - 3)時間後、(18 - 4)時間後……というふうに短縮されつつあるとしたら?
月曜日8時45分の24時間後、火曜日8時45分に『59分』へ。
火曜日8時45分の23時間後、水曜日7時45分に『58分』へ。
火曜日7時45分の21時間後、木曜日4時45分に『57分』へ。
木曜日4時45分の18時間後、木曜日22時45分に『56分』へ。
もしも、この考えが正しいとしたら、
木曜日22時45分の14時間後とは――――……金曜日、今日の、12時45分!
越古さんが『55分』に気付いたのと、ほぼ同じタイミング!!
「あぁああああああッ!!」思わず、叫び声を上げてしまった。