💭   🔁   ❤×?173



 集会では、改めて相曽さんと出目さんの死が告げられた。
 死因については触れられなかった……もっとも、出目さんの死因は学校中の生徒が知るところだけど。

 1限目は、またも自習になった。そして、生徒が1人ずつ呼び出されて聞き取り調査が行われている。
 その栄えある1人目が――

【クラス委員長】長々(おさなが)「警察の人が来ていたぞ」教室のドアを開けるやクラス中の視線を集め、戸惑いながらもそう言う。「次は蹴鞠くんだ」

【陽キャリーダー】蹴鞠「分かった。ありがとう」

 今日は驚くほど欠席者が多い。
 出席番号1番の犬飼くんと、2番の魚ノ目くんは欠席だ。

【紅一点】州都(すと)「あ! 犬飼のヤツ、学校休んでTwittooしてやがる」

 確認すると、家で飼っている犬の写真を無数にUPしていて、必死にいいねを稼ごうとしているようだった。
 ……にしてもこの芝ワンコ、可愛いな!
 僕はとりあえず芝ワンコが可愛いツイートの数々に片っ端からいいねをしていき、彼のいいね稼ぎに貢献しておく。最後に、一番可愛いと思った1枚を拡散(リツイート)しておく。

 全部拡散(リツイート)してやれって?
 うーん……僕は『物部カタル』アカウントを自作ホラー小説専用として扱っているから、ホラーに無関係な物を拡散(リツイート)したり、ましてや出目さんの死体画像を拡散(リツイート)したりするのに抵抗があるんだ。

【紅一点】州都「魚ノ目のヤツもだぜ。あーあ、俺も学校なんてサボっていいね稼ぎするんだったぜ」

 確認すると、魚ノ目くんは堂々と釣りに出掛けているようだ。
 命が懸かっているだけに、みんな必死だ。

 教室の片隅では、数を減らした『陽キャ男子組』がたむろしている。
『陽キャ男子組』の序列(発言力)と言えば、上から蹴鞠くん、米里くん、州都さん、以下団子だと思っていたんだけど、米里くんは(うつむ)くばかりでちっとも喋らない。
 そういえば、出目さんに『アンタの所為で』となじられてたけど、何があったんだろう?

【登山部】山野登「州都(シュート)は美人だから、リフティングとか神芸を動画にしたら映えるかもな」

【紅一点】州都「あれ~? そんな事を言ってていいのかよ?」にししと笑いながら、『インスタ女子組』がたむろしている方を指差す。

【登山部】山野登「ちょっ、やめろよ!」顔を赤くする。

 おやおや、この非常時に色恋沙汰だろうか。まぁ、僕も人の事は言えないけれど。
 星狩さんの方を見れば、彼女が微笑んでくれた。可愛い。やっぱり星狩さんは最高だ。

【映えの権化】蝿塚「――あ、そうだ、そうよ! この事自体をツイートしたら、バズるんじゃないの!?」

【セミプロダンサー】舞姫「この事って?」

【映えの権化】蝿塚「呪いの事をよ! あゆの死体のツイートで注目されているはずだから、それを拡散(リツイート)して、『皆さん助けて下さい! いいね下さい』ってやれば――」

【甲子園】花園甲太郎「無駄だぞ!!!!」

 びっくりするほどの大声が、教室に響き渡った。野球部所属で甲子園にも行ったピッチャーの花園くんだ。
 彼は普段は寡黙なんだけど、ひとたび口を開けば、一言一句がメチャクチャでかい。流石は体育会系だ。

【甲子園】花園甲太郎「昨日試したが、ツイート出来なかった!!!!」

【映えの権化】蝿塚「……そ、そうなの?」怯えるように聞き返す。

【甲子園】花園甲太郎「そうだ!!!!」

【映えの権化】蝿塚「そ、そう……ごめん、信じてないわけじゃないけど、一応確かめるわね」スマホに打ち込んで、「……本当だ。呟いたはずなのに、出て来ない。あぁ、クソっ……」

【甲子園】花園甲太郎「だろう!?!?」

 男子たちは、1人10~20分くらいで聴取が進んでいく。
 誰も自習なんてやってなくて、スマホにかじりついてツイートするのに必死になっているか、もしくはダベってる。
 ただ『サブカル女子組』だけは3人で席を寄せ合って、ご丁寧にペンタブまで持ち込んで創作活動に勤しんでいるようだ。馬肉さんは欠席か。

【Vヲタ】武威「ぬぉぉおおッ!? マロンタソの緊急配信!? 全裸待機でござる!」

【エロ垢】江口「……キモ」

【神絵師】上江さんは今まさに書いている絵を、ラフ、線画、ざっくり塗り、本塗り、背景入りの順に少しずつ小出しにTwittooへUPしてて、彼女の熱烈なファンたちから秒速1いいねを獲得している。
 見ている間にカシャカシャと いいね❤ の数字が増えていくんだ。本当、バケモノだと思う。あやかりたい。

【四コマ漫画】四谷さんは、今までは数日に1話のペースだった人気Twittoo四コマ漫画を1時間に1本のペースで上げてて、ファンの1人が『覚醒!? 覚醒か!?』ってリプしてる。
 こちらも物凄い勢いのいいね。

 正岡くんと言い『サブカル女子組』と言い、本物のインフルエンサーは一味も二味も違う。

【プロ棋士】正岡「君の番だよ」

 その、出席番号11番の正岡くんに声を掛けられた。
 12番の的場くんはもう居ない。
 次は、13番――僕、物部かるたの番だ。