💭 🔁 ❤×?027
「いやぁぁぁぁぁあああぁぁぁああああッ!!」
最初に悲鳴を上げたのは、誰だったのか。
兎にも角にも2年4組では全ての窓という窓が開け放たれ、死体を見た女子たちはほぼ全員が泣き叫び、女子も男子も、その場で嘔吐する者が続出した。
やっぱり、アカウントの削除では、呪いから脱出する事は出来ないんだ……と、僕は1人考えていた。
混乱は、全学年、全クラスに及んだ。
出目さんの死体は全ての教室に面した通路に横たわっていたので、全校生徒が彼女の死体を見る事が出来、大量の写真が猫目高校生徒のTwittooを席巻した。
……死体を晒してまでいいねを稼ぎたいのか、承認欲求の権化どもが。
休校になり、僕らは家へ帰らせられる運びとなった。
💭 🔁 ❤×?127
出目さんの動画は多分、カメラ映像ではなく彼女の視界――彼女が人生の最期に見ていた1分間の光景そのものだったんだろう……下校の道すがら、僕はそう考える。
となれば、動画中に差し込まれていた一瞬の暗転は、彼女の瞬きか。クソっ、呪いのビデオか何かかよ。あの動画を拡散するだけで『呪い』から脱出出来るんなら、やってやりたいくらいだ。
ともあれ、これで便宜上『呪い』と呼んでいたこの怪現象が、まさしく霊的な現象であると言い切れるようになった。
人の視界をジャック出来る能力、
存在しないカメラで映像を記録出来る能力、
人のTwittooを勝手に操作出来る能力、
人を自殺に追い込める能力、
人を原因不明の死に追いやる事が出来る能力――。
そういう超常の力が実在するという事を、僕は身を以て知っている。
今日だって、2回も視てしまった。相曽さんと出目さん……2人は一体、どんな気持ちで死んでいったんだろう。
特に相曽さんの、天晴さんを恨めしそうに見ていた、あの、眼。
あれをネタに、短編を1本書こうか。もし、このまま『呪い』が加速するようなら、僕だってうかうかしていられない。どんどん書いて、いいねを稼がないと。
――そう。
僕のホラーが人気なのは、『真に迫る』『臨場感がやばい』『質感がえぐい』等の感想が得られるのは、当たり前だ。何しろ僕のホラーはどれも、僕が実際に目にしたモノを元ネタにしているんだから。
「あら、お帰りなさい???」
叔父叔母の家のドアを開くと、パタパタと音をさせながら、叔母が奥から出てきた。首を傾げる仕草は何とも可愛らしく、漫画だったら頭上にクエスチョンマークが浮いている事だろう。
「随分と早いのねぇ……何かあったの?」
「はい。実は――」
💭 🔁 ❤×?137
自室に戻り、窓を開け、部屋着――ジーパンとTシャツに着替える。
10月だと言うのに、この暑さは一体全体何なんだろう……叔母からはエアコンを自由に使って良いと言われているけれど、我慢出来る間は我慢するつもりだ。
ただでさえ僕は、この左目というハンデを背負っている。今はまだ隠し通せているけれど、今日の、左目からの出血の件や、相曽さんを視て気を失った事なんかが叔父叔母の耳に入り、左目の真相を知られてしまったら、気味悪がられるに決まっている。
電気代くらいで目くじらを立てる叔父叔母ではないけれど、心証というものは些細な事の積み重ねで悪くなっていくものなんだから、気を遣うに越した事は無い。
ベッドに横になり、考えを巡らせる。
……さて、これからどうしよう?
いいね稼ぎの為の執筆――これは欠かせない。けれどそれ以前に、『呪い』を解呪する方法は無いものか。
醜いイジメっ子どもが恐怖に怯えながら死んでいく事――その事に対しては、自分でも驚くくらいに何も感じていない。
『いいね❤ × 1時間 = 余命』の登録ボタンを押したのは僕であり、いわば的場くん、相曽さん、出目さんを殺したのは僕だとも言えるわけだけど、まるで心が痛んでいない。
僕は思いの外ドライな人間だったらしい……もちろん彼ら彼女らが善良な人間だったら、心を痛め、罪悪感に押し潰されそうになっていたに違いないけど。
星狩さんは過去にバズった経験があるらしいし、僕もいいねは数千個ほど持っているはず。
1日生きる延びるのに必要ないいねは24個。正直、現状のままなら全然生きていける。
けれどもしも明日、『いいね❤ × 59分= 余命』が、出目さんや種田の言うように『58分』になるような事になれば? さらに翌朝、『57分』になっていたら? 1日毎に1分ずつ減っていくとして、最終的に『favo_min』というアカウント名の通りに、『いいね❤ × 1分= 余命』になってしまったら?
24 × 60は――ええと、1,440か。
――――――――――――――――無理だ。
毎日1,440以上もいいねを稼ぐとか、何処のインフルエンサーだよ。
何とかしなくちゃならない。けど、例の登録サイトが消えてしまった以上、手掛かりが無い……いや、星狩さんのスマホにならURLの履歴が残っているかも。
あぁ、クソっ、星狩さんの連絡先を知っていれば!
……まぁ、女の子から連絡先を聞き出すなんてとんでもない芸当が、クソ雑魚陰キャDTの僕に出来ようはずがないんだけど、ね。
ともかく、こうなったらもう、あの人に助けを求めるしかない。
いつだってとてつもなく頼りになるあの人――頼々子さんに!
「いやぁぁぁぁぁあああぁぁぁああああッ!!」
最初に悲鳴を上げたのは、誰だったのか。
兎にも角にも2年4組では全ての窓という窓が開け放たれ、死体を見た女子たちはほぼ全員が泣き叫び、女子も男子も、その場で嘔吐する者が続出した。
やっぱり、アカウントの削除では、呪いから脱出する事は出来ないんだ……と、僕は1人考えていた。
混乱は、全学年、全クラスに及んだ。
出目さんの死体は全ての教室に面した通路に横たわっていたので、全校生徒が彼女の死体を見る事が出来、大量の写真が猫目高校生徒のTwittooを席巻した。
……死体を晒してまでいいねを稼ぎたいのか、承認欲求の権化どもが。
休校になり、僕らは家へ帰らせられる運びとなった。
💭 🔁 ❤×?127
出目さんの動画は多分、カメラ映像ではなく彼女の視界――彼女が人生の最期に見ていた1分間の光景そのものだったんだろう……下校の道すがら、僕はそう考える。
となれば、動画中に差し込まれていた一瞬の暗転は、彼女の瞬きか。クソっ、呪いのビデオか何かかよ。あの動画を拡散するだけで『呪い』から脱出出来るんなら、やってやりたいくらいだ。
ともあれ、これで便宜上『呪い』と呼んでいたこの怪現象が、まさしく霊的な現象であると言い切れるようになった。
人の視界をジャック出来る能力、
存在しないカメラで映像を記録出来る能力、
人のTwittooを勝手に操作出来る能力、
人を自殺に追い込める能力、
人を原因不明の死に追いやる事が出来る能力――。
そういう超常の力が実在するという事を、僕は身を以て知っている。
今日だって、2回も視てしまった。相曽さんと出目さん……2人は一体、どんな気持ちで死んでいったんだろう。
特に相曽さんの、天晴さんを恨めしそうに見ていた、あの、眼。
あれをネタに、短編を1本書こうか。もし、このまま『呪い』が加速するようなら、僕だってうかうかしていられない。どんどん書いて、いいねを稼がないと。
――そう。
僕のホラーが人気なのは、『真に迫る』『臨場感がやばい』『質感がえぐい』等の感想が得られるのは、当たり前だ。何しろ僕のホラーはどれも、僕が実際に目にしたモノを元ネタにしているんだから。
「あら、お帰りなさい???」
叔父叔母の家のドアを開くと、パタパタと音をさせながら、叔母が奥から出てきた。首を傾げる仕草は何とも可愛らしく、漫画だったら頭上にクエスチョンマークが浮いている事だろう。
「随分と早いのねぇ……何かあったの?」
「はい。実は――」
💭 🔁 ❤×?137
自室に戻り、窓を開け、部屋着――ジーパンとTシャツに着替える。
10月だと言うのに、この暑さは一体全体何なんだろう……叔母からはエアコンを自由に使って良いと言われているけれど、我慢出来る間は我慢するつもりだ。
ただでさえ僕は、この左目というハンデを背負っている。今はまだ隠し通せているけれど、今日の、左目からの出血の件や、相曽さんを視て気を失った事なんかが叔父叔母の耳に入り、左目の真相を知られてしまったら、気味悪がられるに決まっている。
電気代くらいで目くじらを立てる叔父叔母ではないけれど、心証というものは些細な事の積み重ねで悪くなっていくものなんだから、気を遣うに越した事は無い。
ベッドに横になり、考えを巡らせる。
……さて、これからどうしよう?
いいね稼ぎの為の執筆――これは欠かせない。けれどそれ以前に、『呪い』を解呪する方法は無いものか。
醜いイジメっ子どもが恐怖に怯えながら死んでいく事――その事に対しては、自分でも驚くくらいに何も感じていない。
『いいね❤ × 1時間 = 余命』の登録ボタンを押したのは僕であり、いわば的場くん、相曽さん、出目さんを殺したのは僕だとも言えるわけだけど、まるで心が痛んでいない。
僕は思いの外ドライな人間だったらしい……もちろん彼ら彼女らが善良な人間だったら、心を痛め、罪悪感に押し潰されそうになっていたに違いないけど。
星狩さんは過去にバズった経験があるらしいし、僕もいいねは数千個ほど持っているはず。
1日生きる延びるのに必要ないいねは24個。正直、現状のままなら全然生きていける。
けれどもしも明日、『いいね❤ × 59分= 余命』が、出目さんや種田の言うように『58分』になるような事になれば? さらに翌朝、『57分』になっていたら? 1日毎に1分ずつ減っていくとして、最終的に『favo_min』というアカウント名の通りに、『いいね❤ × 1分= 余命』になってしまったら?
24 × 60は――ええと、1,440か。
――――――――――――――――無理だ。
毎日1,440以上もいいねを稼ぐとか、何処のインフルエンサーだよ。
何とかしなくちゃならない。けど、例の登録サイトが消えてしまった以上、手掛かりが無い……いや、星狩さんのスマホにならURLの履歴が残っているかも。
あぁ、クソっ、星狩さんの連絡先を知っていれば!
……まぁ、女の子から連絡先を聞き出すなんてとんでもない芸当が、クソ雑魚陰キャDTの僕に出来ようはずがないんだけど、ね。
ともかく、こうなったらもう、あの人に助けを求めるしかない。
いつだってとてつもなく頼りになるあの人――頼々子さんに!