翌日の夜遅く、兄の家を訪ねた。
 連絡をせずに行ったせいか驚きの表情で迎えられたが、「やることにした」と告げると、兄は絶句し、目から涙を零した。
 それは衝撃的な光景だった。
 こんな瞬間が来るとは思ってもいなかった。
 しかしどういう態度を取っていいかわからなくなり、それにこれ以上伝えることもないので帰ろうとすると、「ありがとう。恩に着る」と両手を強く握られ、抱きしめられそうになった。
 慌てて身をかわしたが、心は喜びで震えていた。
 これ以上嬉しいことはなかった。
 人生最良の日、という言葉が頭に浮かんだ。