体が一段と大きくなった二人が言葉の虐めだけで満足することはなかった。
 より暴力的な欲求を満たすために手と足を使い始めたのだ。
 しかも、周囲にばれないように巧妙にやることを申し合わせた。
 廊下でターゲットに近づくと、見えないように膝蹴りをしたり肘打ちをするのだが、あまり痛くないようにやるのだ。
 声を出されるのを防ぐためだった。
 
 下校時も同じことを繰り返した。
 仲よく遊んでいる振りをして、笑いながら膝蹴りと肘打ちを繰り出すのだ。
 そして、涙目になっているターゲットに「あんたも笑いなさいよ」と強制し、別れる時には口封じをすることを忘れなかった。
「言い付けたらもっと酷いことをするからね」と。

 しかし、それが常習化すると単なる暴力では満足しなくなった。
 ただ泣かすだけでは飽き足らなくなり、もっと刺激の強いことをやりたくなった。
 
 二人は悪知恵を絞り始めた。
 すると、黄茂井がある情報を掴んできた。
 
「あの子の家、金持ちだってこと知ってる?」

 ターゲットの住む家は大きく、マンションを5軒も持つ資産家だということを突き止めたのだ。

「あの子からお金せびろうよ」

 小遣いの少ない黄茂井はお金に飢えていた。

「いいね。それいい」

 欲しいものがいっぱいある寒田は一も二もなく賛成した。
 しかし、一気に大金をせびるとバレてしまう可能性があるので、小さくせびることに決めた。
 それも、現金ではなく物をせびるのだ。
 そこで目をつけたのがコンビニスイーツだった。

 最初は140円のシュークリームと120円のマシュマロだった。
 ターゲットの小遣いで買えるものを選んだのだ。
 しかし、ターゲットが素直に応じると、要求はどんどんエスカレートしていった。