約束通り2週間後に本とノートを返しに来た。

「面白かった?」

「うん。凄く」

 漢和辞典や国語辞典を引きながら一生懸命読んだのだと言った。

 わたしはその場でノートを開いた。
 平仮名だらけの文章だったけど、笑わないで真剣に読んだ。
 
「わたしにわかるように書いてくれてありがとう」 

「そうか?」

 彼はボリボリと頭を掻いたが、本当に嬉しそうだった。
 わたしはこのチャンスを逃さず、「今度はこれ」と図書館で借りた別の本を渡した。
『ベーブルースのすべて』
 野球の神様と呼ばれている大スターの生涯について書かれた本だった。
 
 受け取った彼が「大多仁選手もこれを読んだのかな?」と興味深そうに表紙を見つめたので、「そうかも知れないわね」と返事してノートを渡すと、「2週間後な」と笑って本とノートをランドセルに仕舞った。