その後の彼の英会話の上達には目を見張るものがあった。
 驚くほどの速さで上達していった。そ
 れは、はっきりした目標があるからだと思った。
 
「メッスやロナウデと同じチームになって英語で話している自分を想像したら、楽しくて楽しくて、毎日1時間以上CDを聞いているんだ」

 スポーツマンの集中力と持続力は凄いと思った。
 でも、上達の原因はそれだけではなかった。
 建十字と奈々芽に英語を教えているところを見たのだ。
 
「球人は大リーグに行きたいんだろ。メジャーで活躍するためには、監督やチームメイトの言うことがわからないと困るだろ。だったら、英会話できるようにならないと」

「速人はオリンピックに出たいんだろ。金メダル取りたいんだろ。だったら、日本を出て強い外国人と勝負しないと。そのためには英会話ができないと」

 横河原は自分が覚えた英会話のフレーズを建十字と奈々芽に毎日話しているようだった。そして、三人で会話をしているらしい。
 
 わたしは家に帰って、お母さんにそのことを話した。
 すると、「良かったわね」と喜んでくれたあと、「自分がわかっていないと他人に教えられないから、一生懸命勉強するようになるのよ。だから、他人に教えるということは、自分に教えるということでもあるのよ」とわたしと目線を合わせるように屈んでニコッと笑った。そして、「よく覚えておきなさい。教え上手は学び上手! って言うのよ」とまた笑った。