「私たち三人は、小学生の頃、三文字悪ガキ隊と呼ばれていました。スポーツは得意でしたが、勉強はさっぱりダメで、悪いことばかりしていたからです。授業中は居眠りばかりしていました」

 横河原が引き継いだ。
 
「そんな三人が勉強をするきっかけを作ってくれたのが、明来貴真心さんです。彼女は英語や国語、数学など、一流のスポーツマンに必要な知識を、スポーツマンの立場に立って教えてくれました。そのお陰で私たち三人は勉強を親友とすることができました。今の私たちがあるのは彼女のお陰なのです」

 奈々芽にマイクを渡した。
 
「彼女はその経験を活かし、スポーツ専門の中学校を作ることを思い付きました。思い付いただけでなく、その実現を信じ、実現のために奔走(ほんそう)しました。その結果生まれたのがこの夢開スポーツ学園なのです。彼女がいなかったら、この学校は生まれていません」

 三人がマイクを握り合って大きな声で叫んだ。
 
「貴真心!」

 三人の視線を追うように全員の視線がわたしに向いた。
 突然のことに驚いてしまって、いきなり目から何かが落ちてきた。
 それがどんどん(あふ)れてきて、たまらなくなってしゃがみ込んだ。
 そんなわたしを抱きかかえるようにして秋村教頭が壇上へ連れて行ってくれた。
 すると、止めどなく流れる涙で目の前が霞んでいるわたしを割れんばかりの拍手が包み込んだ。
 
 建十字と横河原がわたしの両手を掴んで高々と上げた。
 その途端、拍手がひと際大きくなり、ワ~っという歓声が起こった。
 
 体が震えた。
 
 心も震えた。
 
 いつまでも拍手は鳴り止まなかった。