席に戻り、彼の目をまっすぐに見た。

「ありがとうございます。とても嬉しいです」

「それでは、」

「いえ、」

 わたしは首を横に振った。

「桜田さんのことは尊敬できる方だと思っています。でも、」

 わたしは胸に手を当てた。

「好きな人がいます。幼い頃からずっと好きな人がいます」