◇ 開校への道 ◇
 
 夢開市が開始したクラウドファンディングは順調にその額を増やしていたが、それと比較できないほどふるさと納税に対する反響は凄まじかった。
 一気に10億円が集まったのだ。
 それは、全国1,800弱の都道府県市町村の中で50位に相当する金額だった。
 大リーグで活躍する建十字とヨーロッパの名門サッカークラブで活躍する横河原の人気は想像を超えたものだった。
 サイン入り色紙とサイン入りボールの在庫が底をつき、募集の一時中止を余儀なくされる事態となるほど凄かった。
 桜田は慌てて追加の依頼をしなければならなかったが、一気に集まった資金を基に、校舎や運動場の整備、トレーニング設備の導入を始めることができた。
 それによって開校に向けた作業が猛スピードで進みだした。
 
 次に桜田が決めたのは、学校の名前だった。
 スポーツ少年少女の夢が開く学びの園にしたいという思いを込めて『夢開スポーツ学園』と名付けた。
 夢開スポーツ専門中学校という名前も考えたが、将来中高一貫校にしたいという想いがあり、この名前に決めたのだ。
 
 設立準備委員会の初会合で挨拶に立った桜田は、「プロの選手を輩出させるということだけを目標とはしない。日本の公立中学校で大きな問題となっている虐めや不登校がない学校にしたい。そのためには、生徒同士が、そして、生徒と教師が、更に、保護者と教師が労り合い支え合う学校にしなければならない」と持論を述べた。
 その上で、「生徒と保護者と教師、関係するすべての人の夢が開く学びの園にする!」と思いの丈をぶつけた。