「あとは、アスリート教師だな」

 丸岡の声で、わたしは現実に戻った。
 すると〈好機逸すべからず!〉という言葉が浮かんできた。
 早速行動を開始しなければならない。
 三人で手分けをしてアスリート教師を探すのだ。
 
 駅前の喫茶店で話し合った結果、それぞれが母校出身者と会って、可能性のある人をしらみつぶしに当たっていくことにした。
 
 わたしは都立教育大学卒で、かつ、プロ経験がある人や実業団チームで活躍している人たちを選び抜いてコンタクトを取った。
 丸岡と鹿久田は都立体育大学卒で、かつ、教員資格を持つアスリートを口説くために休日をすべて潰して全国を走り回った。
 
 日を追うごとに手応えを感じてきた。
 多くの人から前向きな返事を貰ったからだ。
 スポーツ専門中学校が実現したら必ず参加すると。
 もちろん慎重だった人もいる。
 しかし、ある言葉を聞いた瞬間から態度が変わった。
 それは〈夏島が校長に就任予定〉という言葉だった。
 夏島はラグビー界を超えてスポーツ界全体から尊敬を集めていた。
 更に、スポーツに情熱を燃やす人にとって魔法の言葉である〈未知の領域への挑戦〉という誘惑も彼らの心を鷲掴みにしたようだった。