安達たちと合流すると、みんな日向野の風貌に目を丸くしていた。
「いいじゃん、純人!」
「八代に任せて正解だったわ」
やはり一番テンションが上がっていたのは花岡と篠宮だった。
「とりあえず先メシ行かね?」
安達の提案は通り、八代たちは近くのファミレスへと入った。
動画を撮りたいからという理由で、席は日向野、花岡、篠宮と並び、その対面に八代、山下、安達と座った。
「普通デート動画撮るなら対面じゃない?」
面白くなさそうに山下が突っ込んだが、花岡は隣の目線から撮った方が近くていい画が撮れる、というイマイチピンとこない理由で押し通していた。
それぞれでランチメニューを頼み、メニューが運ばれてくると早速花岡がスマホを構えた。
「普通に、食べていいの?」
「うん。むしろ普通に食べてる姿が欲しいから」
日向野は花岡に言われるままに、ボロネーゼを食べ始める。
「日向野くん、食べた後ちょっとこっち向いてくれる?」
花岡の隣から篠宮が支持を出してキャッキャしながら動画を撮っている。
八代側、男子三人は何を見せられているのかと呆れながらそれを眺めて昼を食べた。
「純人の方からも撮ってくれない?」
「え?」
「一応、対面の画も撮っておきたくて」
花岡に渡されたスマホを受け取り日向野に向ける。
「撮るよ?」
「どうぞ」
パスタをフォークで巻いている日向野をスマホの画面越しに見つめる。
ふと、日向野が上目遣いにこちらを見ると、パスタを巻いたフォークをカメラに向けてきた。
「はい、あーん」
その表情は今まで一度も見たこともない優しい顔をしていた。
日向野の彼女はこんな感じで一緒にご飯を食べられるのか。何度か昼を一緒に食べたことはあるが、こんな顔一度も見たことないな。やっぱりここからの目線は特別なのだ。
スマホが無ければきっと一生見られなかっただろう。
「いいよ日向野くん! 純人、スマホ貸して」
停止ボタンを押して花岡にスマホを返す。花岡と篠宮は動画を見返して盛り上がっているが、日向野は照れるわけでもなく、ただパスタを食べ続けていた。
「日向野って彼女居たことあんの?」
不意に山下が聞く。
動画を撮っていたのが八代だったせいか、山下の口調は普通で本当にただ疑問に思っただけのようだった。
「どうして?」
そして日向野が質問を質問で返す。
「なんでって、なんていうか今のすごい自然だったから」
「そう? 彼女が居たらこんな感じかなーって思っただけだよ」
「その顔があってもできないんだな」
彼女はいたことない、と日向野は決して言ってはいないのに、安達は今の言葉でできたことはないと判断したらしい。
「知ってるでしょ。俺陰キャだから」
「あーそっか。確かに」
安達は清々しいほどはっきりと日向野の言葉を肯定した。
でもどうしてわざわざあんなに顔を隠すような風貌をしていたのだろうか。
今はこうして普通にしているのだから、何か隠したいものがあったわけでもなさそうだし。
結局、日向野に彼女はいたことないという話で落ち着き、それからはどんな人がタイプなのかとか、恋人に求める条件とかそんなことを話してファミレスを出た。
ファミレスから歩いてすぐのところにあるアミューズメントパークへ向かいながら、何となく日向野と隣になって歩いた。
「動画大丈夫そ?」
「うん。別に撮られてるだけだから」
「でもほら、色々指示もあるじゃん。あぁいうの恥ずかしくないの?」
「別に言われた通りにやるだけだから。そんなに気になる?」
「正直言うとさ、日向野ってこういうグループとかに属するの嫌なタイプだと思ってた」
淡々とこうしてグループに馴染めるのなら、初めから誰かとつるんでいるはずだ。
別に話している感じコミュニティ能力は普通にある。なのにあえてそれをしなかったのは、こういうグループ行動が嫌いだからだとばかり思っていた。でも本当は違うのだろうか。
「そりゃ一人の方が好きだよ。気楽だし。だから八代くんと仲良くなるのはちょっと気が引けてたんだよね」
そういえば、一緒にポチャチャカフェに行った時に言われたことがあった。
“八代くん友達いっぱいいるじゃん”と。だから一緒に昼は食べたくないと断られた。
あの時は深入りしないようにと特に理由は聞かなかったけれど、日向野はやっぱり一人で居たかったのだ。
「でもグループの輪の中に入ったら、八代くんのこと何かわかるのかなって思った」
「俺のこと?」
「そう。八代くんはいっぱい俺のところに来てくれたから、じゃあ俺も行ってみようかなって」
それは自分が日向野に対して興味を抱くのと同じ感覚なのだろうか。
知りたいと思ってくれたのだろうか。近づきたいと思ってくれたのだろうか。
そう考えると嬉しい気持ちで胸が熱くなる。
「何かわかった?」
「んー八代くんは人に合わせるのが上手ってことはわかった」
「そう。実は俺は受け身なの。生まれこのかたずっとね」
「俺には積極的に来たくせに」
言われて思わず固まる。痛いところをついてくるな。
「だから不思議なんだよね。何でかなって」
聞かないでくれと願った。そんなところ疑問になんて思わないでほしい。
聞かれたってなぜなのかなんて答えられないし、勝手に居心地がいいと思ってしまっただけなのだから。
「何でだろうなー。なんか喋りやすかったから?」
「そんなこと?」
「そんなこと」
濁すと日向野はそれ以上聞いては来なかった。
「いいじゃん、純人!」
「八代に任せて正解だったわ」
やはり一番テンションが上がっていたのは花岡と篠宮だった。
「とりあえず先メシ行かね?」
安達の提案は通り、八代たちは近くのファミレスへと入った。
動画を撮りたいからという理由で、席は日向野、花岡、篠宮と並び、その対面に八代、山下、安達と座った。
「普通デート動画撮るなら対面じゃない?」
面白くなさそうに山下が突っ込んだが、花岡は隣の目線から撮った方が近くていい画が撮れる、というイマイチピンとこない理由で押し通していた。
それぞれでランチメニューを頼み、メニューが運ばれてくると早速花岡がスマホを構えた。
「普通に、食べていいの?」
「うん。むしろ普通に食べてる姿が欲しいから」
日向野は花岡に言われるままに、ボロネーゼを食べ始める。
「日向野くん、食べた後ちょっとこっち向いてくれる?」
花岡の隣から篠宮が支持を出してキャッキャしながら動画を撮っている。
八代側、男子三人は何を見せられているのかと呆れながらそれを眺めて昼を食べた。
「純人の方からも撮ってくれない?」
「え?」
「一応、対面の画も撮っておきたくて」
花岡に渡されたスマホを受け取り日向野に向ける。
「撮るよ?」
「どうぞ」
パスタをフォークで巻いている日向野をスマホの画面越しに見つめる。
ふと、日向野が上目遣いにこちらを見ると、パスタを巻いたフォークをカメラに向けてきた。
「はい、あーん」
その表情は今まで一度も見たこともない優しい顔をしていた。
日向野の彼女はこんな感じで一緒にご飯を食べられるのか。何度か昼を一緒に食べたことはあるが、こんな顔一度も見たことないな。やっぱりここからの目線は特別なのだ。
スマホが無ければきっと一生見られなかっただろう。
「いいよ日向野くん! 純人、スマホ貸して」
停止ボタンを押して花岡にスマホを返す。花岡と篠宮は動画を見返して盛り上がっているが、日向野は照れるわけでもなく、ただパスタを食べ続けていた。
「日向野って彼女居たことあんの?」
不意に山下が聞く。
動画を撮っていたのが八代だったせいか、山下の口調は普通で本当にただ疑問に思っただけのようだった。
「どうして?」
そして日向野が質問を質問で返す。
「なんでって、なんていうか今のすごい自然だったから」
「そう? 彼女が居たらこんな感じかなーって思っただけだよ」
「その顔があってもできないんだな」
彼女はいたことない、と日向野は決して言ってはいないのに、安達は今の言葉でできたことはないと判断したらしい。
「知ってるでしょ。俺陰キャだから」
「あーそっか。確かに」
安達は清々しいほどはっきりと日向野の言葉を肯定した。
でもどうしてわざわざあんなに顔を隠すような風貌をしていたのだろうか。
今はこうして普通にしているのだから、何か隠したいものがあったわけでもなさそうだし。
結局、日向野に彼女はいたことないという話で落ち着き、それからはどんな人がタイプなのかとか、恋人に求める条件とかそんなことを話してファミレスを出た。
ファミレスから歩いてすぐのところにあるアミューズメントパークへ向かいながら、何となく日向野と隣になって歩いた。
「動画大丈夫そ?」
「うん。別に撮られてるだけだから」
「でもほら、色々指示もあるじゃん。あぁいうの恥ずかしくないの?」
「別に言われた通りにやるだけだから。そんなに気になる?」
「正直言うとさ、日向野ってこういうグループとかに属するの嫌なタイプだと思ってた」
淡々とこうしてグループに馴染めるのなら、初めから誰かとつるんでいるはずだ。
別に話している感じコミュニティ能力は普通にある。なのにあえてそれをしなかったのは、こういうグループ行動が嫌いだからだとばかり思っていた。でも本当は違うのだろうか。
「そりゃ一人の方が好きだよ。気楽だし。だから八代くんと仲良くなるのはちょっと気が引けてたんだよね」
そういえば、一緒にポチャチャカフェに行った時に言われたことがあった。
“八代くん友達いっぱいいるじゃん”と。だから一緒に昼は食べたくないと断られた。
あの時は深入りしないようにと特に理由は聞かなかったけれど、日向野はやっぱり一人で居たかったのだ。
「でもグループの輪の中に入ったら、八代くんのこと何かわかるのかなって思った」
「俺のこと?」
「そう。八代くんはいっぱい俺のところに来てくれたから、じゃあ俺も行ってみようかなって」
それは自分が日向野に対して興味を抱くのと同じ感覚なのだろうか。
知りたいと思ってくれたのだろうか。近づきたいと思ってくれたのだろうか。
そう考えると嬉しい気持ちで胸が熱くなる。
「何かわかった?」
「んー八代くんは人に合わせるのが上手ってことはわかった」
「そう。実は俺は受け身なの。生まれこのかたずっとね」
「俺には積極的に来たくせに」
言われて思わず固まる。痛いところをついてくるな。
「だから不思議なんだよね。何でかなって」
聞かないでくれと願った。そんなところ疑問になんて思わないでほしい。
聞かれたってなぜなのかなんて答えられないし、勝手に居心地がいいと思ってしまっただけなのだから。
「何でだろうなー。なんか喋りやすかったから?」
「そんなこと?」
「そんなこと」
濁すと日向野はそれ以上聞いては来なかった。