次の日、学校に向かおうと駅まで歩いていると、後ろから誰かに声をかけられた。
「アオ〜!」
声のほうに振り返れば、中学のときの同級生、田嶋 泰成が手を上げてこっちに向かって走ってくる。
「久しぶり」
中学のとき、いちばん仲がよかった。
志望校が違ったから高校が別々になるのはわかっていたけど、やっぱり少し残念だ。
駅に着くまで思い出話だったり、近況を軽く話しているとすぐに駅が見えてきた。
すると突然、隣を歩いていた泰成が「げっ!」と声を漏らす。
「前歩いてる女の人、あれバ先の先輩だわ」
そう言って少し前を歩く男女ふたりを指差している。
「マジかー、彼氏いたんだ」
悲しそうに落ち込む姿を見て、しっかり恋愛もしていることを知る。
ふたりを見たくないからと、足早に改札を通って先にホーム内へ入っていく泰成。
制服のポケットから定期を取り出して、俺も改札を通ろうとしたとき、ふと、その女の人の腰に手を回す人物の顔が見えた。
「……えっ……」
あの顔を俺は知っている。
黒髪の長身で、大人な男の人。
それは昨日見た、お姉さんと一緒にいたアイツだったから。
「……なんで別の女といるんだよ」
お姉さんはこのことを知っているのだろうか。