あの日から、1年以上が経った。






〜〜〜♪♪♪


店内を流れるこの音楽は、もう頭の中で鳴ってるんじゃないかって思うくらい聴き飽きた。


今日だけでも数え切れないくらい聴いてきた。


1週間ごとにでも流れる音楽を替えてくれたら少しはマシになるのに……なんて、バイトを始めてから何回思ったかわからないことを今日も考えながら入口に目を向ける。


「いらっしゃいま……あ」

「アオイくんお疲れ様」


21時を過ぎた頃にやってくるいつものお姉さん。


“あの日”から、お姉さんとはたわいもない話をする仲になった。






お姉さんが店内を歩く度に鳴り響くヒールの音。


目を閉じてもその心地いい音が、お姉さんがいまどこのコーナーにいるのかわかる。


──コツ、コツ、コツ、コツ


少しずつ近づいてくる音が、俺の立っているレジの目の前でピタッと止んだ。


閉じていた瞳を開けると、俺を見て笑うお姉さんが立っていた。