はじめて聞いたお姉さんの声。
綺麗で透き通った、想像していた何倍も可愛かったせいで、何度も練習していた台詞が頭から抜け落ちてしまった。
お姉さんの瞳が俺をジッと捕らえていることに気がついて、思わず逸らしてしまう。
視線を逸らした先には、さっき俺がレジを通した缶チューハイとアイスクリームが、お姉さんの細い腕に抱き抱えられている。
「あっ、えっと……ち、近くに住んでるんですか?」
「え?」
「あっ、アイスよく買ってるんで……」
俺の視線を辿るように、お姉さんが自分が抱えていたアイスクリームに視線を落とす。
「あ、うん。5分もかからないかな」
「そしたら、アイス買ってること誰にもわからないように帰ってくださいね」
俺の言葉に首を傾げている。
「いや、あの、よく言うじゃないですか。“コンビニでアイスを買う = 溶ける心配のない距離に家がある”って……」
そこまで言ったところで沈黙が流れる。
よく考えてみたら、仲良くもない店員に急にこんなことを言われて気持ち悪いはず。
やってしまったかもしれない。
とりあえず謝ろうとしたとき、俺を見ていたお姉さんがフッと笑った。
「もしかして、あたしのこと心配してくれてる?
店員さん優しいねありがとう。でもごめんね。あたしこのアイス帰り道に食べながら帰ってるから家に着くころにはアイスなくなってるから大丈夫だよ。あっ、お行儀が悪いから君は真似しちゃだめだよ〜!」
そう言うと、今度こそレジに背を向けて夜の闇へと消えていった───。
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