「……ありがとう。
アオイくんもうアルバイト終わりでしょ?敬語じゃなくてもいいよ」


お姉さんに近付けるみたいで嬉しい。


「わかりました」

「ふふっ、敬語になってる」

「あっ、」


もう敬語で話すのが定着していて、自然と出てしまった。


お姉さんは笑っている。


ずっと敬語で話していたから、いきなりそれをなくすのは難易度が高いな。


「そうだ、これ忘れないうちに」


ポケットに入っている1枚のレシートの存在を思い出す。


「俺、来年から受験生だからバイト辞めるんです」


お客さんが置いていったレシートの裏に、連絡先を書いていた。


お姉さんに渡せないままずっとポケットで眠っていたもの。


「そっか、辞めちゃうんだ……寂しくなるね」

「……はい。でも寂しい夜に電話をかけてきてくれたら、ずっとお話できます。だから、お姉さんがよければ……」


少し考えたお姉さんは、


「ありがとう、連絡するね」


そう言って、クシャクシャになったレシートを受け取ってくれた。