ほんの少しだけでいいから、距離を縮めたかった。









客足が落ち着いた21時を少し過ぎた頃にやって来る、ひとりの小柄な女の人。


その人はいつも、350mlのノンアルコールの缶チューハイとアイスクリーム1つを買っていく。



───コトン


今日もいつもと変わらない2つの商品が俺のいるレジに置かれた。


「……いらっしゃいませ」


缶チューハイとバニラのアイスクリームのバーコードを順番に通す。


「378円でございます」


今日は小銭がなかったのか、白くて綺麗な細い指から1枚のお札がそっとトレイに置かれる。


「1000円お預かし致します。


……622円のお返しでございます」


俺から受け取ったお釣りをお財布にしまって、買った2つの物を手に取って帰ろうとしたお姉さん。


いつもみたいに、ありがとうございましたが続くはずだった。


「……あのっ!」


ドアに向かって歩いていたお姉さんはビクッと肩を揺らして、俺の立っているレジに身体ごと振り返る。


「は、はい」