……お姉さんはなにしているんだろう。
油のなかに沈んだチキンをボーッと眺めながら考えるのは、やっぱりお姉さんのこと。
イブだからあの彼氏といるんだろうか。
それとも、あの浮気ヤローとはとっくに別れているのか。
結局、あのとき俺が駅で見たことはお姉さんに言えないままだった。
どうしてもっと早くに連絡先を渡さなかったんだろう。
ここ数日、このことばかりを後悔している。
ピーッと、チキンが揚がり終わった音が鳴ってトングで挟んでトレイに移し替える。
時間も時間だしチキンを揚げるのはこれで最後でいいかな、なんて考えながら、チキンをのせたトレイを持ちながらレジカウンターに出たと同時に入店音が鳴る。
「いらっしゃいま────、」
思わず持っていたトレイを落としそうになった。