プロローグ


 出会いはムードもクソもなかった。
 制服姿で雨に打たれて、何も映していない瞳で地面を見つめるわたしに、あなたは声をかけてきた。
 今思っても、どうして助けてくれたのか分からない。わたしを助けることであなたに得があったとは、到底思えない。
――それでも。
 こうして、出会ってしまったから。
 愛を、知ってしまったから。
 もう二度と、昔の自分には戻れない。
 そんなことを考えて、時々怖くなる。
 もしあなたが、わたしを捨てたら?わたしはどうやって生きていけばいい?あなたのいない世界で、わたしは生きていける気がしない。だからどうか。
 わたしと、一緒にいて。
 こんな汚くて濁ったわたしだけど、それでもいいなら。というか、あなたもわたしと同じようなものか。
 だったらお似合いだ。
 この理不尽だらけの世界で、わたしとあなた。痛いほどに手を握って、苦しいほどに抱きしめ合って、もう嫌だってくらい、愛を確かめ合って。
 ふたり、生きていこう。