放課後、溜まりつつあった課題を一気にやっつけようと、自習席がある図書館へ向かう。
どの課題も直近提出というわけではないけれど、どれもこれも提出日が重なっていて、今から少しずつ片付けておかないと未来で泣くのは容易に想像できる。
未来の自分の為だ、と言い聞かせ、図書館へ入ろうとした時、背後から少し大きい声で名前を呼ばれ、私は振り向く。

いつもなら終礼の時間が終わるとすぐに練習着に着替えている陶山が、まだ制服を着て立っていた。

「あー、間に合ってよかった。もう帰ったかと思った」

陶山は安堵の息を漏らすと、「急で悪いんだけど、今からちょっとだけ時間ない?」と一息つく間もなく続けた。

「今から?」

「うん。明日、音楽の授業あるだろ? さっき木村に会ったんだけど、明日から音楽祭の練習するって聞いて、そういえば一度も伴奏に指揮、合わせたことなかったなって気づいた」

木村とは、私たちの音楽の先生だ。

「確かに、そうだよね」

「出来れば明日の授業までに一度合わせておきたいんだけど、音楽2限目だろ。俺、どうしても明日の朝練は抜けられなくてさ。出来れば今からちょっと合わせられると助かるんだけど」

「わかった。いいよ」

伴奏と指揮が合わなければ、明日の授業でみんなに迷惑をかけてしまう。
本当は課題を片付けたかったけれど、どうしても今日やらなければいけないわけじゃない。

「でも、どこで練習する? 音楽室、使えるかなあ」

「それは大丈夫。さっき木村に会った時、一応許可取っておいたから」

「おお、さすが陶山。用意周到」

褒めた私に、陶山は「だろ」と得意げな表情をみせた。