「あ、これこれ。陶山、これだよ~」
想像以上にたくさんの種類があって、そしてかわいいデザインで、付き添いで来た私の方がテンションがあがる。
「これ、色が違うだけ?」
「違うよ! 中に入っているお花だってそれぞれ違うじゃん」
陶山は目の前にある、紫色に染められた花が詰められたボールペンをとると、「全部一緒に見えるんだけど」と眉間に皺を寄せる。
私は目の前にあったグリップが白色のボールペンと薄いピンク色のボールペンを手に取ると、
「ほら、白色のお花の方が小さいでしょ? それにお花の種類も違うよ」
「そうかあ?」
どう見たって違うのに、彼はピンとこないらしい。
「まあ、でも確かに中に入っているお花にこだわるよりは、好きな色を選んであげるのがいいんじゃないかな。ボディーの色の方が目立つからね」
「好きな色……」
少しの間悩んだ後、陶山は私の目の前にあった薄いピンク色のボールペンを手に取った。
「これにする。好きな色、わかんねえけどさ、ピンクは嫌いじゃないと思うし」
「そっか。このピンク色なら淡いから仕事場でも使えるだろうし、いいと思う」
早速レジにボールペンを持っていき、ギフトラッピングをしてもらう。
お店から出ると、陶山はわかりやすく「はーーー」と大きく息を吐き出した。
「これで肩の荷が降りた。マジで助かった。ありがとう」
「いいえ。お役に立てたのならよかった」
「お礼にカフェでジュースでも奢るよ」というありがたい申し出を断り、駅の改札へ向かう。駅にはいくつかカフェがあるけれど、なんせ学校の最寄駅だ。どのお店にも、同じ学校の生徒たちはいるだろう。
「じゃ、本当にありがとう。泉本も何か困ったことがあれば、いつでも相談してな」
「それは心強い。ありがとうね」
手短に挨拶を交わすと、それぞれの電車のホームへ向かった。