きみがいる、この世界で。


「鈴木さん!」

大きな私の声に、鈴木さんはゆっくりと振り向く。


「教えてください。もし24年前の決断した日に戻れるとしたら、同じ決断をしますか?」

「……どうかな」

鈴木さんはかすかに口角をあげる。

「それすら24年間悩んでもまだわかりません。ただ一つ言えることは、即決はしないということです」

「と、彼は言うと思いますよ」と最後に付け足される。

「だから、泉本さんもしっかり考えてください」

海風に髪の毛をあおられながら、小さくなっていく鈴木さんの背中に向かって、深々と頭をさげる。

『生きてくださいね』

鈴木さんの優しい声が、もう一度、耳元で聞こえた気がした。