「夏生は、いつも一歩引いたところからNATUralezaのことを見て、色んな意見を出してくれる。時には真面目に、時にはふざけた意見をな。でも、そのどれもが的を得てるし、的確な情報として教えてくれる。流石だと思ったよ。俺は、そんな夏生に出逢ってから今日まで、数えきれないぐらいたくさん救われた」

「そんな・・・。僕が咲佑くんのことを救ってたなんて、それは大袈裟じゃないですか・・・?」

「大袈裟なんかじゃない。実際、夏生の誕生日当日の話し合いのときだって、弱音を吐いてまで俺の脱退に反対してくれてたし、公表後どんな仕事に結び付けられるとか、自分の知らないことを積極的に調べて、それで新たな道を示してくれた。グループを抜けちゃだめだって引き留めてくれたのに、最後の最後、勇気を出して、俺の背中を押す決断をしてくれてありがとう」

「いえ。僕は何もしてませんから」

「夏生。そこまでネガティブになってたら駄目だ。夏生からすれば何もしてないように思うのかもしれないけど、夏生がやってくれてることは、ちゃんと俺たちの心に響いてるし、為にもなってる。夏生の立ち位置は決して間違ってない。だから大丈夫。そんな夏生のこれからを俺は楽しみにしてる。夏生はNATUralezaが行き詰ったとき、助けてやる資格があるんだから」

「はい」

「夏生はこれからも演技を武器に、老若男女問わず魅了してやれよ」

「はい」

「田村夏生。出逢えて本当によかった。今日までありがとう。大好きだぞ」

「僕もです。咲佑くん、これからは友達として、お願いします」

「おう」

 夏生は、咲佑が紡ぐ一言一句を、嚙みしめるようにして聞き、そして頷いた。握られた拳が震えていた。咲佑はその拳を優しく包み込み、「大丈夫」と夏生にしか聞こえない声量で伝えた。夏生は再び頷いた。