アリーナはヘンリックとクラークが教会へ向かうのを見送った。
ヘンリックは大丈夫だろうか?心配だった。

そんなアリーナに父は
「きっと大丈夫だよ。私達は将来的に魔力の解放はするべきだとは聞いていた。だが、本人が子供の頃の記憶が無かったかからヘンリック君の両親はどうするべきか迷っていたようなんだ。魔力が無くてもヘンリック君は勉学も優秀だし若いのに外交官補佐にもなった、おまけに人柄もいい。私もこのままでもいいのではないかとも思っていたんだ。」
「そうだよね。私はヘンリックが魔力無くても構わないわ。今のままでも素敵な人だもの。ただ、魔力が戻ったらヘンリックがかわるんじゃないかって心配なの。」
「魔力が戻っても性格は変わらないと思うがにゃ。。」そうブルーノが言った。
「ただ、白魔力を持ってるのが他人に知られてしまうと面倒な事がおこるかもしれないな。」と父が言った。
「訓練すれば魔力は隠せるにゃ。多分大丈夫にゃ。」意外とブルーノは楽観的だった。
「そうだな。ヘンリック君なら魔力も上手く使えるようになるだろう。」そうアリーナに言った。
「そうだよね。」アリーナは心配そうに頷いた。
「あと、落ち着くまでしばらく学校を休んではどうかな?」
「んー試験があるからあんまり休みたくないんだ。なんとかなるよ。」
「そうか?なんかあったらちゃんと言うんだよ。」
「うん、わかった。」

その後、ブルーノとアリーナは部屋に戻り話をした。
「アリーナ、あんまり心配しなくてもヘンリックは大丈夫だにゃ。」
「うん、そうなんだけど。ただ、マリンの事も気になって。」
「そうだにゃーあれが例の魔女だとしたら捕まえないといけないにゃ。でも、それはアリーナやオレの仕事ではないにゃ。」
「もし、マリンが捕まったとして、男子達はどうなるの。あのまま魅了に取り憑かれたまま?」
「しばらくはそうだけど、魅了の魔法は時間が経てば消えるにゃ。」
「かならず?」
「かかった程度はあるけどそれはちゃんと解けるにゃ。」
「そうなんだね。そういえば、ブルーノは魅了にかからなかったの?近くに行ったんでしょ?」
「オレは普通の動物と違って聖獣だからかからないにゃ。」
「そっか、聖獣は凄いんだね。」
「そうにゃ。そしてそのオレを使い魔にしてるアリーナも凄いのにゃ。」
「私凄いの?」
「そうにゃ。本来なら主人は使い魔に命令してなんでもやらせるものなんだがにゃ。アリーナはオレに命令はしないにゃ。」
「そうだね。ブルーノは使い魔というより友達?兄弟?家族?みたいだからね。」
「オレはアリーナの使い魔でよかったと思ってるにゃ。自由にさせてもらってるし。でも危険な時はオレが守るからにゃ。」
「うふふ、ありがとう。これからもよろしくね。」
「まかせろにゃー。」

ブルーノ本人はアリーナを妹のように思っていた。家族とか友達とか言われとても嬉しかった。本当は小さい頃からアリーナの知らないところでブルーノは危険回避のためにいろいろとやっていた。わざわざ危険があった事は本人には言っていない。

きっと1人と1匹はこれからも仲良しだ。

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ヘンリックはクラークと屋敷に帰って来た。
家族は心配そうにヘンリックに寄り添う。
「ただいま。」
「おかえりヘンリック。」
「封印は解いてもらったよ。制御はちゃんとできてるよ。」
「そうか。それはよかった。」
「それで、少し訓練をしないといけないんだ。」
「そうだな、使いこなせない事にはな……。」
「父上、あの訓練場を使わせたらどうでしょうか?」ビルバーグが言った。
「今は使ってないが、そこで訓練をしていいぞ。」
「訓練場?そんなものがあったんですか?」
「ああ、ヘンリックが使う事はないだろうと思っていたから教えてなかったな。」

父や兄は魔法騎士団に所属している。
アンダーソン家には広大な領地があり宝石や魔石の鉱山も幾つか所有している。
その中で既に魔石の廃鉱山となったものがありそこの敷地を訓練場として使っていた。
広大な敷地で民家も近くに無い。その為攻撃魔法を使っても影響はない。
父や兄は赤魔力があったのでその訓練所で魔法の鍛錬をしていた。
赤魔力は火、火力による攻撃魔法や防御魔法が主である。

「では、そこで訓練をします。クラーク殿、宜しいでしょうか?」
「私はかまいませんよ。」
「それでは、僕が案内します。」と兄が言った。
「少し離れた場所だから用意も必要だろう。準備をするのでそれまでしばらく身体を休ませろ。」父がそう言った。
「はい、そうします。」
「ところで訓練場にはどのくらいいるつもりだ?」
「とりあえず7日ほど様子をみます。」とクラークが答えた。
「おそらくヘンリック殿はすぐに使えると思います。弱い魔力から順に使えるように訓練をする予定です。」
「僕、送ったら訓練をみていいかな?何個も魔力を持つ者の訓練なんて滅多に見れないから。父上はどうしますか?」
「うーむそうだな。しかし仕事があるしな。時間が空きそうなら行ったみてもいいぞ。それに、ビルバーグよ、仕事はどうするつもりだ」
「僕は休み取りますよ。だって弟が初めて訓練をするんですよ。見ないわけにはいきませんよ。」
「兄上、僕はそんな子供じゃないですから。」
「いや、それは譲れないな。よし、決まりだ。僕も行って手伝うよ。父上いいですよね。」
「うむ。しょうがないやつめ。」
「さっそく僕も準備しなくちゃ。」ビルバーグはなんだかとても嬉しそうだ。
ビルバーグは昔からヘンリックを可愛がっていた。大人になってもそれは変わらない。彼は弟が大好きなブラコンだった。

訓練場に行く前にヘンリックは父にアリーナの家でのことを話した。石の正体が探していた行方不明者だった事、呪いをかけた魔女らしき人物がアリーナと同じクラスだという事。
アリーナが学校でその魔女の手下に嫌がらせをされてるらしい事。当面はブルーノがついていてくれるが心配だと伝えた。

クラークがその事柄をしたためた手紙をブリーズ国国王に送ったので我が国でも何か動きがでてくる可能性がある。魔法騎士団の父上は忙しくなるかもしれない。と伝えた。


アリーナに会いたいなぁー。心配してるだろうなあ。少しだけなら大丈夫だろう、ちょっとだけ行ってこよう。
ヘンリックはアリーナの家に行った。

「こんにちは、ヘンリックです。アリーナはいますか?」
「アリーナお嬢様は学校に行かれました。」
「そうか、学校に行っちゃったか。」
「ではこれを渡して下さい。」そう言って手紙と花を置いて行った。
「かしこまりました。」家令はそれを受け取る。
ヘンリックは屋敷にもどり訓練場へ行く準備をした。