第一話 失われたもの
とある山の麓に、一軒の家が建っている。
その家の前で無邪気に遊ぶ二人の子がいた。一人は口の横に傷痕がある。
「りんき、りゅうと、ちょっと手伝って。」
家の中から母が呼びかける。
「はーい。」
二人は遊びを中断し、母のもとへ駆けていく。
「ここの紙に書いたものを、それぞれ二つずつ、買ってきてくれる?」
先に返事をしたのは、年上の少年、りゅうとだ。りゅうとは笑って頷く。
「うん、いいよ。りんきも、いこっか。」
もう一人の傷痕のある少年、りんきも頷く。
「りゅうとが行くなら。俺がいないと迷子になるし。」
余計なお世話だと言うりゅうとを遠目から見ているのは、長女のあやかだ。こちらにトコトコと歩いてくると、三人に声をかける。
「二人とも買い出し行くの?りんき、体調大丈夫?」
そう、りんきは生まれつき持病があり、現在も病弱な体なのだ。
「平気平気!それに、体動かさないと駄目だしね。」
心配そうな顔をしつつ、りんきがそう言うなら と財布をとりに戻った。
「無理だけは、しちゃダメだよ。」
あやかはそう言いながら母と一緒に二人のことを送り出し、財布を渡す。
「いってらっしゃい」
りゅうととりんきはあやかと母に手をふって、歩きはじめる。
「まったく、心配性なんだから。」
と呟く。
生い茂った草を掻き分けながら、りゅうとは心配そうな顔でほほえむ。
「無理するなよ。つらかったら、休もうな。」
「りゅうとまで。うん、ありがとう。」
二人はそんな会話をしつつ、町の商店街へ向かった。
「あらあら、二人とも。今日は暑いのに来てくれたのね。お疲れ様。」
仲の良いおばあちゃんに挨拶を交わしてから、買い出しをはじめた。
「えっと...じゃがいも、にんじん、ピーマンは八百屋さんだね。」
「そうだね。先に行っちゃおうか。」
会話を交わしながら目的地まで歩く。これは、りんきが大好きなことだった。
「じゃがいも、にんじん、ピーマンを二つずつください。」
と、八百屋に声をかけ、買い出しを済ませた。
このペースだと、日が暮れてしまう そう思った二人は足早に次の場所へと向かった。
「うっひゃあ、急いだのにもうこんなに暗い。」
りんきが慌てはじめる。
「落ち着け。大丈夫だよ。ゆっくり帰ろう。」
りゅうとがりんきを落ち着かせながら家へと向かった。
「ただいまー。」
二人は声を揃えて言う。そして、買ったものを母に渡した。
「おかえり。ありがとう。」
荷物と引き換えに、二人にお駄賃を渡す。やったね!とハイタッチをする姿をあやかがほほえみながら見ていた。
その後は家族で夕飯を食べ、全員風呂を済まして布団にもぐった。
翌朝、姉は学校、父母は仕事で家を出ていた。りゅうととりんきは学校が休みのため、家にいた。
朝食をすませると、家のチャイムが鳴った。
「はーい」
りゅうとが駆けていき、ドアをあける。なにやら仲良く話していた。
戻ってくると、遊びに誘われたから行くけどりんきも来るか誘ったが、
「俺はいいや。家でのんびり寝るよ。」
と断られた。
「何かあったらすぐ戻ってくるからね。連絡がなくっても兄弟の絆があるから大丈夫だよ。」
「そうだね。何かあったら、戻ってきてね。絶対だよ。」
「うん。分かった。じゃあ、行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
と会話を交わし、りゅうとは家を出た。
りんきは誰もいない家を満喫しようと、一人で遊んだ。
(遅くなっちゃった。まあ寝てるだろうし、大丈夫でしょ。)
りゅうとは遊びが終わってすぐ、家に向かった。
「ただいまー。ごめん、遅くなっちゃった。」
家の中はシーンと静かで、返事が返ってこない。
(まさか...いや、そんなわけないよね...)
胸騒ぎがひどい。
急いで家の中を探しはじめる。
「りんきー?どこだー?」
台所を見て、りゅうとは声が出なくなった。
そう、そこにはりんきが倒れていたのだ。息遣いが荒い。が、まだ生きている。
「りん...き...?」
混乱しながら、自分がとった行動に後悔した。遊びに行ってなければ、こんなことになっていなかったのかもしれない。と、自分を責めた。
りんきに声をかけ、救急車を呼ぼうとする。
「りんき、ごめん...気付いてやれなくて」
泣きながら言う。
「...そ...き...」
りんきが何か喋っている。慌てて耳を近付けた。
「うそつき...」
何も言えなくなった。
「『兄弟の絆』あったはずじゃん...」
心の中で泣き叫ぶ。自分は何てことをしてしまったのだろう と責める。
救急車を呼ぶが、雷雨で山まで行けないから町まで下りてきてくれと言われてしまった。
「りんき、町まで下りる。だから背負う。」
と言いかけるが、嫌だ と言われてしまう。
「言うことを聞いてくれ、助からないぞ、」
泣きながら話しかける。
それでもずっと断り続けるりんき。
「どんなに嫌がろうが背負うからな、。」
やっとりんきを背負うことが出来たりゅうとは、雷雨の中走って坂を上り下りする。
「まだ話すことはたくさんある。絶対に死なせない。」
りんきが喋らなくなった。まだ生きているが、気を失っている。それでも話しかけ続ける。
「謝ることも、お願いすることも、たっくさんある。ここで死んだら許さないから...俺が嘘ついたせいでこうなったこと、りんきの分のアイスを食べたこと...謝らなきゃいけないことたくさんあるんだから...今まで発作が起きても元気に戻ってきたんだ。今回も元気になるだろ、?信じてるからな。」
町についた。救急車はすでに来ていたようだ。
「りんきを...りんきを治して...」
そこから救急車に一緒に乗ったところまでは覚えているが、そこから先の記憶がない。おそらくショックで混乱していたのだろう。
家族はりゅうと以外見舞いに来なかった。
でもそのりゅうとは
「調子どう?早く元気になってね」
としか言わない。ひどいもんだ。謝ってくれない。でかい嘘ついたのに。まだ許してないのに。
まあ、もう、いいや。
とある山の麓に、一軒の家が建っている。
その家の前で無邪気に遊ぶ二人の子がいた。一人は口の横に傷痕がある。
「りんき、りゅうと、ちょっと手伝って。」
家の中から母が呼びかける。
「はーい。」
二人は遊びを中断し、母のもとへ駆けていく。
「ここの紙に書いたものを、それぞれ二つずつ、買ってきてくれる?」
先に返事をしたのは、年上の少年、りゅうとだ。りゅうとは笑って頷く。
「うん、いいよ。りんきも、いこっか。」
もう一人の傷痕のある少年、りんきも頷く。
「りゅうとが行くなら。俺がいないと迷子になるし。」
余計なお世話だと言うりゅうとを遠目から見ているのは、長女のあやかだ。こちらにトコトコと歩いてくると、三人に声をかける。
「二人とも買い出し行くの?りんき、体調大丈夫?」
そう、りんきは生まれつき持病があり、現在も病弱な体なのだ。
「平気平気!それに、体動かさないと駄目だしね。」
心配そうな顔をしつつ、りんきがそう言うなら と財布をとりに戻った。
「無理だけは、しちゃダメだよ。」
あやかはそう言いながら母と一緒に二人のことを送り出し、財布を渡す。
「いってらっしゃい」
りゅうととりんきはあやかと母に手をふって、歩きはじめる。
「まったく、心配性なんだから。」
と呟く。
生い茂った草を掻き分けながら、りゅうとは心配そうな顔でほほえむ。
「無理するなよ。つらかったら、休もうな。」
「りゅうとまで。うん、ありがとう。」
二人はそんな会話をしつつ、町の商店街へ向かった。
「あらあら、二人とも。今日は暑いのに来てくれたのね。お疲れ様。」
仲の良いおばあちゃんに挨拶を交わしてから、買い出しをはじめた。
「えっと...じゃがいも、にんじん、ピーマンは八百屋さんだね。」
「そうだね。先に行っちゃおうか。」
会話を交わしながら目的地まで歩く。これは、りんきが大好きなことだった。
「じゃがいも、にんじん、ピーマンを二つずつください。」
と、八百屋に声をかけ、買い出しを済ませた。
このペースだと、日が暮れてしまう そう思った二人は足早に次の場所へと向かった。
「うっひゃあ、急いだのにもうこんなに暗い。」
りんきが慌てはじめる。
「落ち着け。大丈夫だよ。ゆっくり帰ろう。」
りゅうとがりんきを落ち着かせながら家へと向かった。
「ただいまー。」
二人は声を揃えて言う。そして、買ったものを母に渡した。
「おかえり。ありがとう。」
荷物と引き換えに、二人にお駄賃を渡す。やったね!とハイタッチをする姿をあやかがほほえみながら見ていた。
その後は家族で夕飯を食べ、全員風呂を済まして布団にもぐった。
翌朝、姉は学校、父母は仕事で家を出ていた。りゅうととりんきは学校が休みのため、家にいた。
朝食をすませると、家のチャイムが鳴った。
「はーい」
りゅうとが駆けていき、ドアをあける。なにやら仲良く話していた。
戻ってくると、遊びに誘われたから行くけどりんきも来るか誘ったが、
「俺はいいや。家でのんびり寝るよ。」
と断られた。
「何かあったらすぐ戻ってくるからね。連絡がなくっても兄弟の絆があるから大丈夫だよ。」
「そうだね。何かあったら、戻ってきてね。絶対だよ。」
「うん。分かった。じゃあ、行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
と会話を交わし、りゅうとは家を出た。
りんきは誰もいない家を満喫しようと、一人で遊んだ。
(遅くなっちゃった。まあ寝てるだろうし、大丈夫でしょ。)
りゅうとは遊びが終わってすぐ、家に向かった。
「ただいまー。ごめん、遅くなっちゃった。」
家の中はシーンと静かで、返事が返ってこない。
(まさか...いや、そんなわけないよね...)
胸騒ぎがひどい。
急いで家の中を探しはじめる。
「りんきー?どこだー?」
台所を見て、りゅうとは声が出なくなった。
そう、そこにはりんきが倒れていたのだ。息遣いが荒い。が、まだ生きている。
「りん...き...?」
混乱しながら、自分がとった行動に後悔した。遊びに行ってなければ、こんなことになっていなかったのかもしれない。と、自分を責めた。
りんきに声をかけ、救急車を呼ぼうとする。
「りんき、ごめん...気付いてやれなくて」
泣きながら言う。
「...そ...き...」
りんきが何か喋っている。慌てて耳を近付けた。
「うそつき...」
何も言えなくなった。
「『兄弟の絆』あったはずじゃん...」
心の中で泣き叫ぶ。自分は何てことをしてしまったのだろう と責める。
救急車を呼ぶが、雷雨で山まで行けないから町まで下りてきてくれと言われてしまった。
「りんき、町まで下りる。だから背負う。」
と言いかけるが、嫌だ と言われてしまう。
「言うことを聞いてくれ、助からないぞ、」
泣きながら話しかける。
それでもずっと断り続けるりんき。
「どんなに嫌がろうが背負うからな、。」
やっとりんきを背負うことが出来たりゅうとは、雷雨の中走って坂を上り下りする。
「まだ話すことはたくさんある。絶対に死なせない。」
りんきが喋らなくなった。まだ生きているが、気を失っている。それでも話しかけ続ける。
「謝ることも、お願いすることも、たっくさんある。ここで死んだら許さないから...俺が嘘ついたせいでこうなったこと、りんきの分のアイスを食べたこと...謝らなきゃいけないことたくさんあるんだから...今まで発作が起きても元気に戻ってきたんだ。今回も元気になるだろ、?信じてるからな。」
町についた。救急車はすでに来ていたようだ。
「りんきを...りんきを治して...」
そこから救急車に一緒に乗ったところまでは覚えているが、そこから先の記憶がない。おそらくショックで混乱していたのだろう。
家族はりゅうと以外見舞いに来なかった。
でもそのりゅうとは
「調子どう?早く元気になってね」
としか言わない。ひどいもんだ。謝ってくれない。でかい嘘ついたのに。まだ許してないのに。
まあ、もう、いいや。