淡色の君と、透明なセカイ

チケット売り場の近くから半時計回りに、少し道に逸れたところで、目的のお店を発見した。

白とピンクと水色の、かわいい感じのお店。

近くにパラソルの付いたテーブルがいくつかあるけれど、お昼時のせいで埋まってしまっていた。



「どれにするー?」

先にメニューを決めてから、注文することに。




「ふわふわバーガー4つと、らぶらぶサンド2つお願いします!」


「らぶらぶとかよく言えるよな‥‥‥‥」横から聞こえてくる笑菜ちゃんの声を聞きながら、泉君がこそこそと耳打ちしてくる。


「恥ずかしいの?」


「だって、らぶらぶでもないのに‥‥‥‥」



そう言われてしまうと、なんだか恥ずかしく思えてくる。

男の子でも、そういうの気にするんだ‥‥‥‥。



「サクは恥ずかしくねーの?」


「だって商品名だし‥‥‥‥」


「えええ」まじかよ、という表情《かお》。


🔶


「あと、"これください"で伝わるし‥‥‥‥」わざわざ言う意味も無いかなーって‥‥‥‥と恥ずかしそうに笑う。


「それもそうか‥‥‥‥」なんで気付かなかったんだろう、とブツブツ言っている。


「他のところは普通だから」


「ここが異常みたいな言い方すんな」


「だってここ、カップル専用みたいなとこだし」さらっとそんなことを言う。


「まじか」


「他のとこは普通だから大丈夫」とフォローすると、少しほっとした表情《かお》になった。


そんなに気になるのかな。





「奏ー!!こっちきてー!!」受け取り口で笑菜ちゃんが言う。


「はぁい」んじゃ、行ってくるね、と背中を向けて行ってしまった。



「泉君‥‥‥‥」


「‥‥‥‥ん?」


「大丈夫ですか?‥‥‥‥顔、赤いですけど」


「‥‥‥‥‥おー」平気、といつも通りの態度だけど、まだ少しだけ耳が赤い。





男の子でもこんなことあるんだな‥‥‥‥。





「‥‥‥‥なんだよ、物珍しそうにじーっと見て」

🔶

「泉君が赤くなってるの、初めて見たので‥‥‥‥」


「‥‥‥‥なんだよ」うるさいあっち行け、みたいに手をひらひらさせる。

萌黄色が、少しくすんで見えた。




「そんなに恥ずかしかったんだなぁ、って‥‥‥‥」


「や、別にそういうんじゃねーから‥‥‥‥」と視線を足元に転がす。


「男の子でも恥ずかしいんだなぁって、思っちゃいました」







「‥‥‥‥え?」




「‥‥‥‥?」

なんか私、変なこと言ったかな。














「お待たせー!!」

オレンジ色が浮かんで、笑菜ちゃんが人数分のポテトをを持ってきてくれる。


「おー、さんきゅー」さっきまで赤かったのに、いつも通りだ。


「2人で何話してたの?」バーガーを両手に、桜庭君が近づいてくる。


「カップル専用スペースって、恥ずかしいですねって話をしてました‥‥‥‥」


「えー?そーかなー?」言いながら、笑菜ちゃんが1人ずつにポテトとバーガーを配ってくれる。


「あたしはそんな気にしないけど!」自慢げに言う横で、「お前はな!?」と突っ込まれている。



🔶


「恥ずかしくないですか?カップルでもないのにそういうところ‥‥‥‥」


「えー、でも普通にあるよ?学校近くの丘上の高台とか、よくカップル来てるし」


「え、」そうなんだ。知らなかった。


「うちの学校、意外とカップルスポット多いし」言いながら、笑菜ちゃんがポテトを口に放り込む。


学校にそんな場所があったなんて‥‥‥‥。


「だから別に、そういうもんかなって思ってる!!」


みんな、そういう認識なのかな‥‥‥‥。


「人気のお店いくと、カップル多いから、そんな感じかも!!」


そもそも彼女の言う、"人気のお店"というところには入ったことがない‥‥‥‥。


「シノ、困ってるよ?」難しい表情《かお》してる、と桜庭君に言われてしまった。


「え!?ごめん!!」自分基準で考えすぎ、と泉君に釘を刺されている。






「あ!!忘れてた!!」写真撮らせて!!とカメラを手元に向ける。



ポロン♪と音がして、ピンク色が弾けた。







「なにそれ」


「載せようかなって!!」


「帰ってからにしろよ?」不用意に載せると居場所バレるんだから、と苦い表情《かお》をする。

🔶

「帰ってからまとめて載せるから大丈夫ですー!!」ママみたいなこと言わないで!!と口を尖らせる。


「____てか、有名なとこだし平気じゃない?」上からなんか着ちゃえば制服だって分かんないし‥‥‥なんて言っている。



「お前のSNSは無法地帯そうで怖いんだよ」と言う泉君を無視して、

「みんなで撮ろうよー!!」寄ってー!!とぎゅうぎゅう詰めにしてくる。






「他人《ひと》の話聞けよ!?」と抗議が飛んでくるけど、泉君も押しくらまんじゅうに巻き込まれた。


両手にバーガーとポテトを持っているから、ポーズが取れない。







「いっくよー✨」


オレンジ色の声と共に、ピンク色が弾ける。









「おお✨いい感じ!!」



見せてくれた写真には、私たち4人が映っていた。

普通の写真と違って、猫の耳とドーナツが浮かんでいる。




「‥‥‥?」


私が「?」を浮かべていると、横から「加工アプリ使ってるんだよ!!」と黄色が浮かんだ。


「そんなのがあるんですね‥‥‥」




よく見ると、笑菜ちゃんの猫耳が泉君の顔に被っているけど、特に気にしない様子で「保存」ボタンを押していた。


🔶
「プリクラとかじゃなくても気軽に加工できて便利だよねー!!」


「ぷり‥‥‥?」


「え?あの、ゲーセンとかにある、写真撮る機械!!」


「大きい証明写真のみたいなやつですか‥‥‥?」


「そう!!たぶんそれ!!」言いながら、スマホを操作して「ぷりくら」の画像を見せてくれる。


「あ、これです!!」


「普通にこの加工、写真アプリとかでできるよ?」


「そうなんですか?」



たまにネットで載ってる人の写真に動物の耳が生えてるのはこういうことだったのか、と納得する。







「シノちゃん、スマホ機種なに?」


「あ、Android‥‥‥」


「簡単なのでいいなら、トークの写真のとこで撮れるよ✨」と教えてくれたので、いくつか自撮りで試してみることに。


「____わ、本当ですね‥‥‥!!」画面に顔が映ると、認識機能ですぐに加工写真が出来上がる。




そのままカメラを笑菜ちゃんたちに向けると、顔にしっかりと加工がされていた。

画面に映る他の人の頭にも、👑が生えたり、回りに❤️が飛びかっている。

ちゃんと選択したのが反映されてる‥‥‥!!


🔶


「なんか新文明発見したみたいな表情《かお》してっけど?」泉君が言いながら、私の分のバーガーを手渡してくる。

いつの間に持ってもらってたみたい。



「あ!!す、すみません、つい‥‥‥‥」


「や、いいよ」


「えー!!なにそれ!!」あたしが同じことしても面倒だとか言うくせに!!と抗議が飛んでくる。


「日頃の行いの違いだな」と鼻で笑われて、ポテトを奪って怒られて逃げ回っている。


「今日の笑菜ちゃん、いつにも増して元気ですね」


「だねー」はちみつ色がにじんだ。




木陰で話していると、しばらくわちゃわちゃと追いかけっこしていた2人が日向から戻ってきた。

少しだけ、温度が上がった気がする。




「みてみて!!めっちゃ撮ってきた✨」と、スマホ画面を向けてくる。

写し出されたギャラリーには、なぜか同じような写真がたくさん。


🔶
「同じ写真がたくさんですね‥‥‥?」


「連写してたからね!!」あとでここから良さげなの残すんだ!!とスマホを弄《いじ》っている。



「それはいいけど、早く食べろよ」


「えー‥‥‥もうちょっとー」


「長い」ぱし、と彼女の手からスマホを取り去る。


「食べるときは食べなさい!!」


「ママじゃないんだから‥‥‥」ブーブー言いつつ、バーガーに口をつける。


いつもあんなに早く食べるのに‥‥‥。





私の横で、美味しそうに目を瞑っている。


彼女が手に持っているのはハート型のバンズになっていて、中にフルーツとクリームが覗いていた。

さっきみんなで分けて食べたけど、すごく美味しかった。





「笑菜ちゃん、分けないんですか?」



普通のバーガーと一緒に買ってきたそれを、半分ずつで食べることになっていた。

2人が遊んでいたうちに、私は桜庭君と分けて食べちゃったんだけど‥‥‥。




「いずみんは1口でいいって言うから、さっき分けてきた」

あーん、と開いた口が閉じた頃には、半分がなくなっていた。



「そうなんですね」

返事をしながら、笑菜ちゃんは食べるのが速いというより1口が大きいんだな、ということに気付く。





「‥‥‥ん?ふぉしたの?」


「‥‥‥いえ、別に」思わずじっと見ていたことに気が付いて、目を逸らす。


🔶
「そういえば、アトラクションの時間って‥‥‥」


「ふぉ‥‥‥ん、ここの道まっすぐ行って、すぐだから」向こうに見えるピンクの屋根の辺りだよ、と教えてくれる。


「そろそろいい時間だね」とスマホの時計に目を落とした。





ふと見ると、今までいたはずの2人がどこかに消えていた。

さっきまで一緒にいたのに。




辺りを見回すと、すぐ近くの集団に桜庭君を見つけた。
他の班の人に捕まったみたいで、楽しそうに話している。

泉君は‥‥‥どこか別のところにいるみたいで見つからない。








「そいや、シノちゃんてさぁ」


ぼんやりと彼を見る視界の横で、黄色が浮かんだ。









「奏のこと好きなの?」







「‥‥‥‥はい?」

なぜそんな結論《こと》になったのか分からなくて、首をかしげる。



「だって今、あたしより奏のこと見つけるの速かったじゃん?」なんか最近、目で追ってる気がするし‥‥‥、と言われてしまう。


確かに、人混みに隠れてしまって、見えにくくはあったけど。




「前に、彼氏いるみたいなこと聞いたけどさ」


「‥‥‥はい」



笑菜ちゃんが泊まりに来たとき、お父さんがそんなこと言ってたっけ。と記憶を探る。


🔶


「奏とシノちゃん、付き合ってんの?」


「いえ」


「即答!?」そんなに否定しなくてもいいじゃーん、とほっぺたをぐりぐりされてしまう。




「本当、そういうのではなくて‥‥‥」








ただ。



楽しそうに笑う彼が、見れるだけで____。









「ふーん‥‥‥‥?」にまにま、と横で黄色を浮かばせる。


そんなに疑わしいのかな‥‥‥。


「最近さ、なんかシノちゃんに対して優しいってゆーか、そんな感じしたんだけどなぁー‥‥‥」


「それは、最初からです」


「奏が笑うこと増えたから、もしかしてーって思ったんだよねぇ」と、嬉しそうにする。


黄色が、視界にキラキラする。













ふと、抱き締められたときのことが脳裏に浮かんだ。













「‥‥‥あれ?もしかしてまんざらでもない?」


「ふ‥‥‥不可抗力でしたのでっ‥‥‥‥!!」


「へぇー?やっぱなんかあったんだ?」と笑菜ちゃんの表情がとろける。


「そういうわけでは」ただ、話を聞いただけで。





「んじゃ、夜に聞かせてねっ♥️」そう言い残して、桜庭君の元に走っていく。

私も向かう途中で泉君と合流して、1つ目のアトラクションに向かった。