闇の龍神様と癒しの神子

翌朝、海鳥の様子見にいくと目を覚ましたようだが、酷く怯えていた。
十六夜とムクとミクなら動物の言葉がわかるらしく事情を聞いても何も話してくれないらしい。

十六夜が朝の水遊びがてら魚を捕まえくると食べてくれるも、精神的にまだ時間がかかりそうだ。

特に榛名…というか人間には怯えて鳴くほどだ。


ムクとミクにお世話をお願いした。


『東丿島に行くのは話しを聞いてからでも遅くないだろう。俺は捨てた島だが、榛名は気になるんだろ?』

「はい」


「鳥さんのことよくわからないですぅ」
「カラスさんに尻尾の毛を盗られたくらいなの」
ムクとミクは悩んでいた。

「タオル使うですぅ〜」
『こら、俺の着物使うな』
「気にするななのー」


3人の中には入れないが聞こえてくるだけで楽しくなってクスクス笑ってしまう榛名


『どうした?今日は買い出しだろ、支度はまだか?』

「そうでした!」

✱✱✱✱✱✱✱Side  ムク&ミク  ✱✱✱✱✱✱✱

十六夜と榛名は買い出し&海鳥のために何か使えるものがないか探しに行った。


「行ったですぅか?」

「なのなの!」
コクコク頷くミク


「最近の十六夜様は楽しそうですぅ」
「ハルナ様もなのー」


「十六夜様もハルナ様もなかなか進展しないの」
「十六夜様は畜生ですぅ!ハルナ様の気持ちに気づかないお馬鹿ですぅ!」
ムクはむくぅ〜と頬を膨らませて手足をバタバタさせた。

「ヤエ様のことがあるから仕方ないなの…ハルナ様をヤエ様としか見えてないかもなの」

「十六夜様には吹っ切れてハルナ様とくっつくですぅ」

「ボクたちがくっつけるなの!」
「ですぅ?」

ミクはムクの耳元でコソコソ話す

「あのね……………なの。……の。……なの!」

「いい考えですぅ〜」


ムクとミクはニヤニヤが止まらないでいた

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買い出しに行った榛名と十六夜

「いつもの場所と違うんですね」
『ああ。たまにはな…畑を作るんだろ?今日は買い出しで荷物多くなるだろうが、下見でもすればいい』


いつもの場所と違う商業施設はワクワクしてしまう。

「買い物前に色々回っていいですか?」
『構わん。欲しい物があれば買ってやるが、買い出しがあるんだから、程々にしとけよ』



色々回っているとショーウィンドウに展示されていたものに目が吸い寄せられていた。


『欲しいのか?買ってやるから選んでこい』

「え!い、いえ。お高い物ですし結構です」

『高額だろうが気にするな。しかしこれはなんだ?白い洋装のようだが…』

「これはウェディングドレスです。結婚式で花嫁さんが着るものでして…」

榛名は昔、まだ霊力がないと判断される前に絵本や児童書を読んでウェディングドレスや結婚に憧れていた子供時代があった。
東丿島は基本的には和装婚だが、子供時代の榛名はウェディングドレスに憧れ、大好きな兄の冬史郎と本気で結婚したいと思っていた。



『お前も花嫁になりたいのか…』
「いいえ。私は十六夜様の生贄ですから!生贄には無縁ですよ。あ、次の場所行きましょう!」

早足で離れる榛名、十六夜はウェディングドレスを少し眺め、榛名を追いかけた。

「あ、売ってるかな?」
『石屋か?』
目に止まったのは天然石のアクセサリー屋だ。

「東丿島は鉱石の名産地みたいなものでして、売ってるかなって」
鉱石の実物は見たことがある。奴隷と働かされ運んだのだが、盗みを疑われ石や大きい石を投げられたり叩きつけられた痛い思い出だが、鉱石の名前はわからないが綺麗な石だった事は忘れられなかった。


『俺がいた時はまだ鉱石が採れるなんてなかったんだがな』
十六夜が島にいた時期となると数百年前だ。

「天然石ってスピリチュアル?な意味とかあるんですね。ローズクォーツって淡いピンク色で可愛い」


「あの…」
『ああ、買え』
「ありがとうございます」

「あの…ついでに…」
『だから好きにしろ』

数点の天然石と天然石のクジがやっているので数回お願いした。


『お前も女だな。装飾品に目覚めるとは…神の中には女人はいるが殆どが好んでいたな』

「そうなんですか?…天界に帰りたいんですか?」

『俺は捨てられたからな…元の姿に戻っても帰れないだろう』

「変な事、聞いて申し訳ございません」

『いや、いい。俺は元の姿に戻り、八重の魂だけ回収できればな』

十六夜は榛名の手を握る

『俺はお前を手に入れられただけで幸運だ』

「…私も十六夜様に見つけいただき、幸運です」


(私、八重さんに嫉妬してる。十六夜様に勝手に想うだけで幸せなのに…これ以上望んじゃいけないのに…)

榛名は十六夜が自分の魂の前の持ち主と神通力の力しか求められていないと解っていてもモヤモヤと十六夜への気持ちは高まる一方だった。

「これが憧れていたバナナチョコホイップクレープ…」

休憩がてら外のテラス席で休憩し、クレープを購入した。

「私…健康体の前に肥満で太りそう…お餅もたくさん食べてるし…」

『なんでもいいから肥えてくれればいい。抱けんだろ』

「…はい」

『それにしても面白い物を買った。帰ったらムクとミクも誘って作るか!』

「そうですね…」

十六夜は最近、暇つぶしが出来るのが楽しいらしく色々な物に興味を示すようになった。
だから今回買ったのは玩具屋でアイスメーカーと知育菓子だ。
知育菓子なら難しくないのでムクやミクも一緒に作れる。
だが、作ったものは全て榛名が消化しなければならないので大変だな…と思っていた。


『ん?』
「ひゃあ…っ!」
クレープのホイップクリームを頰に付けていたらしく十六夜が舌で舐めた。

『味がわからん…榛名の方が美味しい』
そのまま近づき唇を重ねる


「十六夜様…外ですからっ!…人が見てます…!」

榛名は人の目を気にし顔が赤くなる

『だからなんだ?俺がしたい時にするだけだ』

激しいキスをし人の目を気にした榛名は恥ずかしさのあまり持っていたクレープを握りしめた。

榛名は握りしめたクレープを口に頬張る。ちょっとクリームがはみ出して食べにくい。

十六夜は闇の煙を眺めていた。

「十六夜様、2つ質問いいですか?」
『ああ』

「闇に侵食されているんですよね?闇に支配されたりとか、寿命が縮まるとか何かデメリットはあるのですか?」

『前も言ったが見た目や見えないだけで体中が侵されているが…特にないな。禁忌を犯した者として見た目が変わったのと体の中にがモヤのようなものがあって常に気持ち悪さは付き纏うくらいか。そういえば、使える能力が変わったくらいだな』

「能力?」

『今は雷属性だが、本来の青龍は木属性だ。天恵(てんけい)で農作物や樹木や花に生命を育むことができる』

「わぁあ。素敵なお力ですね。お優しい十六夜様にピッタリです」

『そうでもないさ。もう1つの質問はなんだ?』

「私の神通力の事です。私は自分じゃどの程度かわからないのですが…十六夜様と体を…その重ねた場合、闇を浄化するのに、どのくらいかかるかと…一度きりではないですよね?」

遠くない未来にやらねばならない。
十六夜を救いたい、役に立ちたい気持ちはあるが、十六夜が本来の姿に戻るということは生贄として食われる。自身の生の終わりを告げる。


『普段のお前とキスしている時のお前の神通力の高ぶりが違う。圧倒的にキスしている時が高いな。毎晩体を重ねたとしても最低10年か20年だな』

「10年…20年…それは時間かかりますね。それだけ闇は酷いんでしょうか?」

『何を言ってる、早い方だぞ』

(つまりあと10年は十六夜様といられるんだ。10年後は十六夜様への気持ちどうなってるのかな…)

『天界の神たちでも癒やしの力を持つ者はほぼ皆無みたいなものだ。お前の神通力は特異点だ』

「特異点?」

『ああ。神通力は霊力のように一度力が付けば一生変わらない。だが、お前は成長しているんだ…お前には無限の力があるのかもな』

榛名の髪を優しく撫でる十六夜

「あの…不躾ですが私の神通力は元は八重さんの力ではないのですか?」

自分に自信がなく自己評価の低い榛名は自分の力が信じらない。

『お前自身の力だ。4つの島の初代神子は平等に神通力を与えられているが、お前のは初代を凌ぐほど強い力だぞ。癒やしの力は幻に近いほど稀なんだ。自信持て』

「はい、ありがとうございます」

十六夜はその言葉を聞き、榛名のおでこにキスをした

買い出しを終え、帰宅する。

榛名は十六夜(神獣)から降り、お留守番だったムクとミクが十六夜の体にくくりつけられた荷物をおろす作業をしていた。

榛名が変化に気付く。 

「気のせいだったら申し訳ないのですが、尻尾のあたりハゲておりませんか?」

『誰がハゲだ!』

ムクとミクも確認している。

「本当ですぅ〜」
「どっかぶつけたなの?」


十六夜は巨大な体をひねり、尻尾を確認する

『………!?』


人型に戻ると一目散(いちもくさん)に榛名を抱きしめる

「わぁっ!!い、十六夜様ァ!!」

『よくやったぞ、榛名!!』

榛名にはよくわからないが、十六夜が凄くご機嫌なことだけはわかった。

『お前のおかげで俺様の体は元に戻る兆しがでてきたんだ!』

「本当ですか?よかったです…」
榛名は目をウルウルさせ、十六夜と一緒に喜んだ。

(結果が出ると本当に役に立てたんだと実感する…)



落ち着いたところで、海鳥の様子をムクとミクに尋ねるが拒み続けているようだ。

ペットショップで2人で考え相談し合ったのだが、怪我も治って十六夜が採ってきた魚も完食するほど食欲もあるし、ケージなどで閉じ込めず自由にさせるべきでは?帰りたい時に勝手に帰るだろうと。

とりあえず子供用のプールを買って泳がせた。

人間の榛名には怯えているが、ムクとミクには少し甘えている感じだ。


榛名は十六夜へのバレンタイン贈り物を思いつき、実行することにした。

「できるかわからないけど…」



✱✱✱✱✱✱✱Side  東丿島   ✱✱✱✱✱✱✱


時は1週間前に(のぼ)る。


東丿島では雪愛がイライラしていた。

「ほんとっ!!信じられない!!」

「………」

「落ち着けって」

光希が雪愛たちが罪のない女子生徒を虐めている事を報告し、神代家当主は雪愛の両親にこの事を伝えた上で、雪愛と冬史郎を2週間の謹慎処分にした。

…したのだが、天狗のアヤカシの翼と翼の父である天狗の当主が神代家当主に掛け合い謹慎は3日間と甘い処分となった。
島には島の掟や決まりがあるのはアヤカシも理解しているし、繁栄を望むアヤカシは島の住人と上手くやって行きたいと考えている。
大昔、西ノ島で天狗のアヤカシといざこざがあったのをアヤカシ達は知っているからこそだ。


とはいえ、神代家はアヤカシには強くは言えない。

光希のアヤカシは天狗の下の妖狐なので光希や相手の妖狐の事を想うと尚更。



3日間といえど、生まれた時から「特別中の特別」「規格外の存在」だと島中から(たた)えられ、我儘で我慢ができない性格の雪愛は今回、人生初めてであろう罰を受け、怒り狂っていた。

兄である冬史郎は雪愛ほどではないが「雪愛の兄」として権力を振るい傲慢な性格になっていた。榛名も上位のアヤカシの番になるだろうと期待して優しくしていたが霊力がないとわかると榛名を「裏切り者」と勝手な思い込みで憎悪を抱くほどだった。


「ホントにやりやがったあの女!虐めてやろうとしたのに、私の取り巻き全員、相手が神代家だからってビビって引き下がりやがったのよ!!アイツらタダじゃおかない!」


「まて…上手くやらないと次はないぞ」

怒り狂っている雪愛を冷静にさせる冬史郎。

「わかってるわよ。私は天狗の次期当主の番ってこと、体と心でわからせてやるわ」

雪愛は翼にキスをして甘えた声で「お•ね•が•い」と(ささや)いた。

「…オレはいつでも雪愛の味方だからな。何をするんだ?全て叶えてやる」



海辺で休むために東丿島にやって来た海鳥をみつけた

「島の住人だとヤバいもんね。まずは目の前のストレス発散しないと…」

「そうだな。ムシャクシャしている」


「…?」
海鳥は近づく人影に気づくと飛びたとうとしたのだが…






「ピィエエエエーー!!」

✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱

「ピィ!」

「目が覚めたなの?」
「辛い夢でもみたですぅ?」

「ピィ…」

『お前に何があった?話せるな?』

「……ピィ。…ピピ…」


話を聞くと東丿島で羽を休めするためにやって来たら3人組の男女に襲われ、数日間酷い目にあい、命からがら逃げて来たそうだ。

「頑張ったですぅね」
「もう大丈夫なの!ハルナ様が治してくれたの!」

「ピ??」

木陰に隠れていた榛名が顔をみせると海鳥は怒りで興奮していた。

『礼くらい言ったらどうだ』

「ハルナ様の癒やしの力発揮なの!」
「ですぅ〜」

榛名は興奮している海鳥に近づき、体を何度か撫でると海鳥は「ピェ!」と一瞬驚くも安らいだように落ち着いた。

「どうしたんでしょう、急に」

『お前が治癒の力を使った時の温もりを覚えていて、忘れられなかったんだろ』

そう聞くとなんだか嬉しかった。

「鳥さん、フワフワです。なんという鳥さんなんですかね?」

『知らん。この鳥に聞いても人間が勝手に付けたものなんてわからないと言っていた。朱雀や玄武なら知ってるかもな』

「朱雀様はたしか南ノ島で玄武様は北ノ島の方の守り神でしたね」


『アイツらは好かんがな。俺様が闇に染まった時に散々嫌味言ってきやがったんだ』

苦い顔をする十六夜を榛名は可愛いと感じてしまうが、言わないよう口を閉じた。



海鳥はすっかり榛名に懐き、十六夜は海鳥を使いとして神通力を注いだ。



海鳥改め『葵』と榛名は名付けた。

「ワタクシ、葵は榛名様のため、尽くしますわん」

「ボクたちの後輩ですぅ」
「でもお姉さんなの〜」

葵はすぐにムクとミクを召使いにする女王様になったが、榛名には甘えている。