木の板の上に生地を置くと、料理人から貰った棒で生地を伸ばしていく。

「よいしょ……よいしょ……」

 ころころと棒を転がしたり、生地をちょっとつまんで取り分けたりして生地を丁度良いくらいの薄さまで広げると、四つ折りにして包丁で切っていく。

(それっぽくなってきた)

 完成した麺を回収していった鍋にそれぞれ入れて、強めの火で大体7分くらい茹でていく。

「うわ、危ない……」

 アクも取りながら煮込みつつ、一本掴んで硬さの確認を行った。

「こんなもんかな」

 麺が茹で上がると火を消して鍋を浩国達の元へと持っていく。

「お待たせいたしました。熱いのでお気を付けください」

 春蘭の言葉に雄力は、思いっきり息を吸う。

「ふむ、良い匂いが致しますなあ……! 陛下、匂いを嗅いでみてください」
「お前がそう言うのなら……うん、良いだしの香りがするな」
「そう仰っていただき光栄でございます。どうぞお召し上がりくださいませ。取り皿もどうぞ」

 白い陶磁器の取り皿も配り終えて着席した春蘭は、熱い蒸気を放つ鍋から麺と余っていた具材を取り皿に入れて冷ます。

(結構冷ましておかないと。これは絶対やけどするやつ)

 しかし雄力は待ちきれなかったのか、取り皿に麺を移すとすぐさま箸で掴んで口の中に入れ始めていく。

「雄力さん?!」

 春蘭は嘘でしょ?! と内心呟きながらも雄力を見る。だが彼は熱さを感じさせずにうまいっ! と麺を咀嚼しながら満足そうに叫んだ。

「いやあっうまいなあっ! もりもり食べれますぞ!」
「雄力さん! 熱くないんですか?!」
「武人ですから、早食いには慣れております! ご心配なく!」

 満面の笑みを浮かべながら料理を平らげていく雄力を、春蘭はぽかんと口を開けながら見つめていたのだった。

「春蘭。早く食べないと冷めてしまうぞ」
「あっ……陛下。失礼しました」

 すっかり冷え切った麺を頬張ると、もちもちとした食感に甘みとだしの優しい味わいが口の中で広がっていく。