「痛いと思う暇があればな」
 青年はカッと目を見開くと、すばやく金髪を倒した。金髪は地面に倒れたままぴくりとも動かない。

「は!?」
 萌々香をかかえた一人が声をあげる。
 次の瞬間には残り二人も倒れ、うめき声をあげた。

 萌々香は青年の両腕に抱えられていた。
 何が起きたのか、彼女にはさっぱりわからなかった。ただ、助けられたことだけはわかった。

「ありがとうござ……」
 謝辞は途中で切れた。

 その目は、ありえないものをとらえていた。
 スーツの男性の首から上が、人間のものではなかった。

 月を背に立つ彼の顔は、まるで龍だ。お寺の天井によく描かれている、長いひげをたくわえ角を二本はやした龍。青銀の鱗が月光にきらめく。

 作り物とは思えない生々しさがあった。やわらかでなめらかな質感があり、ひげは風にさからってそよぐ。

「な……」
 恐怖で硬直する。