萌々香は止めに行こうとするが、彼女にもミイラ男によってナイフがつきつけられていて動けない。
「この女が大事なら、わかってるだろうな」
「小物だな。しょせんその程度」
 尊琉は顔をしかめて吐き捨てた。
「黙れ!」
 骸骨が尊琉に突進する。
 尊琉はひらりとかわし、あやまたず骸骨の盆の窪に手刀を叩き込んだ。
 男は声もなく地面に沈んだ。ぴくりとも動かなくなる。
「たわいもない」
 尊琉は侮蔑の目で骸骨を見下ろす。
「あ、あ……」
 馬のお面が尊琉を指さして震える。
 尊琉の顔が龍のそれへと変化していた。
「この姿を見たものは殺す」
 尊琉が言うと、馬のお面は逃げ出した。ススキをかきわけ、走る。
 尊琉が男に手を伸ばすと男の動きが止まった。
 正確に言うと、彼は走ってはいるのだが、ススキの上に留まり、足が空を掻き続けていた。