** *

 車は十分ほど走り続け、人気のない河原に降りた。
 背の高いススキが一面に生い茂り、黒い車の周囲を覆いつくしている。
「ここなら邪魔もないな」
 萌々香の口をおさえた男が言い、手を離した。出口側に男二人がいるので逃げることができない。
 満月の青白い光が嘘くさいほどに明るく、骸骨の薄笑いをはっきりと浮かび上がらせた。
「昨日のあいつはなんだ」
 骸骨が問う。
 萌々香はただ首をふる。
 名刺も名前も、今となっては本物なのか疑わしく思える。
 どうであれ、ここで彼らに言うのは得策には思えなかった。
「なめてんのか!」
 答えない萌々香に男が怒鳴る。彼女は泣きそうになりながら身を固くして、手の中の鱗をぎゅっとにぎりしめる。