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車は十分ほど走り続け、人気のない河原に降りた。
背の高いススキが一面に生い茂り、黒い車の周囲を覆いつくしている。
「ここなら邪魔もないな」
萌々香の口をおさえた男が言い、手を離した。出口側に男二人がいるので逃げることができない。
満月の青白い光が嘘くさいほどに明るく、骸骨の薄笑いをはっきりと浮かび上がらせた。
「昨日のあいつはなんだ」
骸骨が問う。
萌々香はただ首をふる。
名刺も名前も、今となっては本物なのか疑わしく思える。
どうであれ、ここで彼らに言うのは得策には思えなかった。
「なめてんのか!」
答えない萌々香に男が怒鳴る。彼女は泣きそうになりながら身を固くして、手の中の鱗をぎゅっとにぎりしめる。