「このかぼちゃのランタン。アメリカにキリスト教が伝わったとき、アメリカだとカブになじみがなくてかぼちゃがよくとれるからかぼちゃになったんだって」
「へえ、そうなの」
 興味なさそうに貴子は答えた。
「レジはもう締めたから」
「こっちもゴミをまとめたら戻るね」
 母は袋に入れたハロウィンの飾りを萌々香から受け取り、先に二階の自宅に戻って行った。飾りは来年まで押入れの中にしまっておくことになる。
 萌々香はまとめたゴミを店の裏に持って行こうと外に出た。
 夜のアーケード街は閑散として寂しい。シャッターもしまっているので、なおさら寂れて見える。
 商店街に残されたハロウィンの飾りも明日にはぜんぶ撤去されてしまう。
 これも捨てるべきか。
 ポケットから青銀のうろこを出して、萌々香は悩む。
 大きな鱗だった。おはじきくらいの大きさがあり、薄いのに硬い。
「来るって言っておいて、やっぱり来ないじゃない」
 母からの伝言に、いつの間にかすがっていた自分に気が付いた。
 尊琉のきついまなざしと、笑ったときのゆるやかな空気が思い出され、萌々香の胸を締め付ける。