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萌々香は店を閉めたら着替えて母と閉店作業をした。
すでに衣装は普段着に着替えている。
父はハロウィン商戦の反省会という名の商店街の飲み会に出かけている。
「まったく和菓子だけ作ってあとはこっちに全部やらせて」
ぶつぶつと母が文句を言っている。
いつもなら萌々香も一緒になって文句を言うところだが、今日はそんな気分にはなれなかった。
レジの締め作業を母がして、萌々香がハロウィンの飾りを片付ける。
かぼちゃのニタニタ笑いがしゃくに触った。
ジャック・オ・ランタン。
日頃の行いが悪いジャックが悪魔を騙した結果、ジャックは天国にも地獄にも行けずにランタンを持ってあてどもなく彷徨うことになった。
自分は悪いことなんてしてないはずなんだけど。
飾りを袋に入れながら、萌々香は思う。
心は沈んで彷徨っている。たった一日でこんな気持ちになるなんて、昨夜は予想もしなかった。
「知ってる? もともとはかぼちゃじゃなくてカブだったんだって」
萌々香が貴子に言うと、
「なにが?」
と貴子は問い返した。