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「まったく、お前というやつは」
 ホテルの一室で、尊琉はあきれて恵武を見下ろした。
「ごめんなさい」
 耳としっぽが出た状態で、恵武はしゅんとうなだれる。
 恵武は妖怪狸の一族だ。妖力はさほどない。龍天院の一族に昔から仕えていて、彼自身もそのつもりでいるのだが、結局は尊琉が面倒を見ている。
 先ほどは興奮した恵武が耳としっぽを出してしまっていたため、とっさに神通力を使ってホテルに戻って来てしまった。ハロウィンだという言い訳もできるはずが、ついいつもの癖で隠す方向で動いてしまった。
 その後、萌々香の店に再度行ったのだが、すれ違ったようで会えなかった。
 彼女には神通力のこもった鱗を渡したから、いつでも場所はわかるようになっている。あとでまた会いに行けばいいか、といったんホテルに戻って来たところだった。
「だから出張に連れてきたくはなかったんだ」
「だけどオレ、お目付け役で……」
 かつて尊琉の母が冗談で言ったことを真に受けて、それ以来恵武はお目付け役の任務があるのだとずっと思いこんでいる。
 尊琉も弟同然の恵武を無碍にできずについ甘やかしてしまうのだが。