* * *

 やっぱり、からかわれたんだ。
 萌々香は悲しい気持ちになりながら、とぼとぼと店に帰った。
 夕方の商店街はひと気が増してにぎやかだ。灯りも徐々に灯り始め、あちこちに飾られたハロウィンのかぼちゃが口の端を吊り上げてにたにたと萌々香を嘲笑う。
店に着くと、かぼちゃのようににやにやと笑う母の貴子と美穂に出迎えられた。
「デート、楽しかった?」
「楽しくない」
 美穂の問いにしょんぼりと萌々香は答える。
「ケンカでもした?」
「ケンカでもした?」
「それ以前の問題」
 そもそもあれはデートなのか。ただ一緒に商店街をまわっただけだ。
「お式はいつですか、って聞かれたのに」
 母は残念そうに答えている。
 さっき会ったおばさんがもう萌々香と男性の話を貴子にしていたのだ、とうんざりする。近所の仲がいいのは良いのだが、すぐに噂がまわるところは面倒だ。
「ハロウィンのイベントの一環だ、って言っておけばいいんじゃない?」
 なげやりに答えて店頭のかぼちゃまんじゅうを見ると、品切れの札が置かれていた。