思わず俯くと、恵武の頭にまるっこい耳が見えた。腰のあたりからは狸のようなしっぽが生えている。
「いつの間に仮装したの? かわいいね」
 恵武に声をかけると、恵武は萌々香を見て首をかしげた。
しっぽがぴくぴくと動いている。まるで本物のようだ。
「結婚についてだが」
 急に尊琉が言い、萌々香は顔を上げた。
「そろそろ返事をくれてもいいと思うが」
「そろそろってタイミングじゃなくないですか?」
 まだ出会ってからさほど立っていないというのに。彼のことなんて名前しか知らない。
「私、まだ十八だし、会ったばっかりだし……」
 結婚なんて遠い未来のことにように思えてならない。が、即答でことわなかった自分に気がついてしまい、動揺した。
まさか自分は彼のことが?
「俺は二十五歳だ。いまどき七歳差など大したことではないだろう」
「大した事あります!」
 萌々香は抗議するが、尊琉はそうではないらしい。
「君は俺と結婚するしかない。そうでなければ……」
 彼は言葉を切って鋭い目で萌々香を見る。