「どうしてもなにも、君は俺と結婚する。それ以外に道はない」
 萌々香を射すくめる彼の目の奥が、ちらりと青銀に光ったように見えた。
 尊琉は動けないままでいる彼女の手を取る。温もりが萌々香の胸まで届き、鼓動を早くした。
「買ったよー!」
恵武が声を上げる。
「行こうか」
 尊琉に促されて歩きだす。手は繋がれたままだ。
「今度こそ案内してもらえるか」
「でも……」
「昨日助けたのは誰だったかな?」
 萌々香は言葉に詰まる。こんなときにそれを持ち出してくるなんて。
「オレも行きたい!」
 無邪気な恵武の声に、萌々香は負けた。
「せめて着替えを」
「ダメだ。せっかく綺麗なのに着替えるなんてもったいない」
 尊琉は即答で拒否した。
「そうだよ、天女様みたいだよ」
 尊琉に恵武が加勢する。
「でもこれじゃ目立ちますし……」
「なにか言われたらハロウィンだから、でいいだろう」
 尊琉がにやりと笑って言う。